日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
蛍光測定によるシクロデキストリン混合粉砕物中のピレンの分子状態の検討
山本 恵司斉藤 克也川島 弘行米持 悦生小口 敏夫仲井 由宣
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 1993 巻 10 号 p. 1141-1147

詳細
抄録

シクロデキストリン(CD)類とピレンおよび,その混合粉砕物の固体状態蛍光測定を行った。ピレンは結晶単独では470nmにエキシマー由来の蛍光発光ピークを示すが, β-CDとの混合粉砕により400nm付近にピレンのモノマーに由来する蛍光発光ピークが認められるようになり,その相対強度はβ-CDの混合モル比を多くするにつれ増大した。β-CD包接化合物結晶がモノマー発光のみを示すこと,および蛍光寿命解析結果から,β-CDとの混合粉砕によりピレン分子は単分子でβ-CDキャピティーに包接化されると考えられた.γ-CDとの混合粉砕物についてもエキシマー発光とモノマー発光がいずれも認められるが,γ-CD包接結晶がエキシマー発光を示すことから,γ-CDとの混合粉砕過程ではピレン単分子での包接化も可能であるが,主にピレン2分子が包接化されるものと考えられた。キャビティーサィズがピレン分子に比べ小さいα-CDとの混合粉砕においてもα-CDの混合比を多くするとモノマー発光が認められるが,キャピティーを持たない結晶セルロースとの混合粉砕物との比較から,このモノマー発光は包接化ではなく,α-CD分子間にピレン分子が分散したことによるものと考えられた。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top