1993 年 1993 巻 10 号 p. 1141-1147
シクロデキストリン(CD)類とピレンおよび,その混合粉砕物の固体状態蛍光測定を行った。ピレンは結晶単独では470nmにエキシマー由来の蛍光発光ピークを示すが, β-CDとの混合粉砕により400nm付近にピレンのモノマーに由来する蛍光発光ピークが認められるようになり,その相対強度はβ-CDの混合モル比を多くするにつれ増大した。β-CD包接化合物結晶がモノマー発光のみを示すこと,および蛍光寿命解析結果から,β-CDとの混合粉砕によりピレン分子は単分子でβ-CDキャピティーに包接化されると考えられた.γ-CDとの混合粉砕物についてもエキシマー発光とモノマー発光がいずれも認められるが,γ-CD包接結晶がエキシマー発光を示すことから,γ-CDとの混合粉砕過程ではピレン単分子での包接化も可能であるが,主にピレン2分子が包接化されるものと考えられた。キャビティーサィズがピレン分子に比べ小さいα-CDとの混合粉砕においてもα-CDの混合比を多くするとモノマー発光が認められるが,キャピティーを持たない結晶セルロースとの混合粉砕物との比較から,このモノマー発光は包接化ではなく,α-CD分子間にピレン分子が分散したことによるものと考えられた。
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