日本化学会誌(化学と工業化学)
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銀一酸化銀電極の酸化・還元挙動におよぼす塩化ジルコニウム(IV)の影響
木本 衛山本 善史広瀬 清久
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1994 年 1994 巻 1 号 p. 18-25

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抄録

アルカリ蓄電池の正極板としての銀一酸化銀電極の容量増加を目的として,電解質である水酸化カリウム溶液中に塩化ジルコニウム(IV)を添加したときの銀一酸化銀電極の酸化・還元挙動におよぼす影響について検討し,以下のような結果を得た.
(1)充放電曲線においては,従来,銀一酸化銀電極の放電曲線は2段反応であったのに対し,塩化ジルコニウム(IV)の添加濃度が1×10-1mol/1(4.7mol/lKOH)の高添加濃度領域においては,放電曲線の第1段目の電位プラトー部が消失し,放電初期より第2段目のプラトー電位が,放電終了時の電位急落時まで一定電位として推移することが認められた.
(2)サイクリックボルタンモグラムにおいては,本来,銀一酸化銀電極のサイクリックボルタンモグラムは酸化・還元二対の合計4個所のピークが現れたのに対し,塩化ジルコニウム(IV)の添加濃度が1×10-1mol/l(4.7mol/lKOH)の高添加濃度領域においては,還元第一ピークが消失し,逆に酸化第一ピークおよび還元第ニピークが顕著に増大することが認められた.
(3)これらの電極挙動の変化と同時に,電子顕微鏡,EPMAによる電極表面状態の観察結果から,充電過程において電極表面にジルコニウムイオン,塩化物イオンもしくは両者の錯イオンが吸着することにより銀活物質の微細化と,銀活物質のより立体的・三次元的な凝集を促進させることが認められた.また,X線回折結果から,塩化ジルコニウム(IV)添加により銀電極の酸化・還元反応を促進させる効果があるものと推察される.

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