日本化学会誌(化学と工業化学)
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Print ISSN : 0369-4577
スピンプローブ法を用いたポリ塩化ビニル内部における低分子添加剤の動的挙動
澤田 公平小野寺 祥榎本 裕之長岡 伸一向井 和男
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1999 年 1999 巻 3 号 p. 169-176

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抄録

可塑剤としてジオクチルフタレート(DOP)を未添加/添加したポリ壇化ビニル(PVC)中に,スビソプローブ劇として異なつた置換基を有する3種のTEMPOラジカル誘導体(TEMPO(-H),TEMPOL(-OH),TEMPOAM(-NH2))を加え,ESR測定によりその回転相関時間(τc(m))を90-180℃ の温度範囲で求めた.各ラジカルのτc(m)の値はDOPの添加量の増加に伴い減少した.同様に,τc(m)の値は温度の上昇に伴つて減少した.この結果は,DOP添加量の増加と温度上昇に伴う,PVC樹脂の密度の低下と,これに伴うPVCの粘度の低下に起因すると考えられる.また,TEMPOラジカル中の官能基(-H,-OH,-NH,)の違いにより,τc(m)の値が異なることが明らかとなつた.この結果から,TEMPO誘導体中の官能基(-H,-OH,-NH2)とPVCとの分子間相互作用の存在が予測された.TEMPo誘導体とPVCとの相互作用のエネルギーを,MOPAC93プログラムを用い,UHF-PM3法によって求めたところ,PVCと各TEMPO誘導体中の官能基との相互作用の存在が示唆された.また,PVCとTEMPO誘導体およびDOPとの相互作用の安定化エネルギーはTEMPO<TEMPOL=DOP<TEMPOAMの順に増加し,各TEMPO誘導体の回転運動が速いほど安定化エネルギーが低下する傾向にあることが明らかとなった.

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