日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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膨張黒鉛による重油の収着,回収およびリサイクル
豊田 昌宏盛屋 考治相澤 淳一稲垣 道夫
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1999 年 1999 巻 3 号 p. 193-198

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抄録

重油等の流出事故において従来より使用されているポリプロビレソ製重油吸着マットと膨張黒鉛の吸着能力を比較した場合,膨張黒鉛は,自身重量の80倍程度の大きな重油収着能を示すことを明らかにしてきた.本研究では,かさ密度,全細孔容積の異なる膨張黒鉛試料を用い収着能,収着速度について調べた.その結果,かさ密度0.009/cm3,比表面積49.7m2/g,全細孔容積0.166cm3/gの膨張黒鉛では,A重油を膨張黒鉛重量の83倍を収着したのに対し,かさ密度0.010g/cm3,比表面積44.0m2/g,全細孔容積0.134cm3/gの膨張黒鉛では,A重油を70倍しか吸着しなかつた.粘度の高いC重油では,前者が67倍収着量を示したのに対して,後者は,60倍の収着量を示したのみであつた.原油,B重油でも両者の間には重油収着量で10g程度の差が見られた.これら収着能に差が認められた原因としては,膨張黒鉛形状に差があるためと考察した.事実,用いた膨張黒鉛の形態をSEMにより観察したところ,形状に差が認められた.また,全細孔容積を比較したところ,全細孔容積の小さな試料では,収着量も少ないことが明らかになり,形状,特に細孔が大きく関与していることが明らかになった.

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© The Chemical Society of Japan
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