脳磁図は非侵襲的にヒトの脳活動を捉える技術であるが、磁性を帯びた金属がアーチファクトとなり計測を妨げることがある。本研究では18種類の歯科用金属の組成の違いが脳磁図計測へ与える影響、磁気共鳴画像装置(MRI)による高磁場の影響、さらにハンディタイプの消磁器の効果を検証した。それぞれの金属材料を(1)未処理、(2)消磁器による消磁後、(3)MRIによる磁場印加後、(4)再度の消磁後の4つの状態で磁場計測した。各材料を往復運動させた時の磁場を全頭型脳磁図計で計測し1分間の平均パワーを求めた。対照として材料のない状態での状態の磁場を1分間、10回ずつ記録し、平均値+標準偏差の5倍をアーチファクトの判定基準値とした。主成分が強磁性体の8種類のうち状態1から4で基準値以上であった材料は、それぞれ6、5、8、7種類であった。強磁性体でない10種類では、それぞれ1、0、4、2種類であり、状態1での1種類も基準値を6.2%上回るのみであった。以上より、1.強磁性体でない材料では脳磁図計測に大きな影響を及ぼさない可能性が高いこと、2.強磁性体であっても脳磁図計測に支障をきたさない材料も存在すること、3.MRI検査による磁場の印加では磁性体の性質に関わらず材料が磁化する可能性が高いことが示された。この結果は様々な歯科用金属を装着する被験者の脳磁図計測の際に役立つ。