認知神経科学
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シンポジウムII
発達障害の病態生理: 発達性読み書き障害における音韻操作機能の検討
稲垣 真澄北 洋輔
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2014 年 16 巻 1 号 p. 35-40

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抄録

【要旨】発達障害の概念は知的障害に対する福祉支援政策の充実がきっかけとなり、50 年以 上前に初めて示された。DSM-5(2013 年 5 月)では 6 種類の疾患(障害)から成る診断カテ ゴリー、Neurodevelopmental disorders にまとめられている。これらは全般的知能、社会性、固 執性保持、不注意、多動衝動性、言語機能、学習機能、運動機能に関する臨床症状を単独あ るいは重複して現わすという特徴がある。学習障害のうち、発達性読み書き障害(Develop- mental dyslexia、DD)の病態生理として音韻処理障害仮説がもっとも注目されている。我々 は日本語音の最小単位である拍(モーラ)の操作に関わる脳機能を明らかにするため仮名合 成課題を作成し、機能的磁気共鳴画像研究を行った。健常者では左下・中前頭回、左前側頭 葉そして両側大脳基底核に賦活増加が認められ、日本語音韻操作時には大脳皮質レベルの関 与だけでなく、大脳基底核等の皮質下機能の関与が明らかとなった。一方 DD 児は音韻操作 の有無にかかわらず、大脳基底核(被殻)の活動亢進と左上側頭葉の活動低下がみられ、非 効率的な音韻処理を行っている可能性が示された。本研究の成果は、日本語話者における DD 病態解明の基礎となるものであり、今後の客観的診断や治療法開発につながるものと考 えられる。

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