認知神経科学
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シンポジウムII
注意の発達とその障害 - 精神遅滞児における事象関連電位の検討 -
渕上 達夫
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2014 年 16 巻 1 号 p. 41-47

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抄録

【要旨】注意(attention)は、一般的に受動的注意(passive attention)と能動的注意(active attention)に分類される。今回注意の発達とその障害に関して、事象関連電位 P300 を用いて 検討した。 事象関連電位 P300(P3)は、1965 年 Sutton らにより初めて報告され、被験者に特定の感覚 刺激(聴覚、視覚、体性感覚刺激など)を与え、それを認知、識別させ、一定の課題を実行 させた場合に、刺激後約 300 msec の潜時で出現する陽性成分をいう。また、Squires らによ り、P300 は早期成分(P3a)と後期成分(P3b)の 2 種類に分類され、P3a 成分は受動的注意 に、P3b は能動的注意に関連する波形といわれている。 聴覚空間認知・注意機能を、ドップラー効果を付け自動車が近づいてくるように聞こえる 三次元増大音を用いて健常児と精神遅滞児を対象に P300(P3b)潜時を測定し、その比較検 討を行った。その結果、P300 潜時よりむしろ、Key 押し弁別反応時間での違いが顕著に認め られた。 小児で注意の発達およびその障害を事象関連電位 P300 で検討する場合、P300 潜時の発達 的変化を十分認識した上で、Key 押し弁別反応時間も含め、総合的に検討する必要があると 考えられた。

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