認知神経科学
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物忘れ外来における高齢発症てんかん
── 認知症との鑑別や関連について ──
塩﨑 一昌
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2019 年 21 巻 3+4 号 p. 189-193

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抄録

【要旨】疫学調査では高齢者でてんかんが増えることが報告されているが、このことやその病態についての周知は十分でない。高齢発症のてんかんは、側頭葉を焦点とする複雑部分発作complex partial seizure(CPS)が多く、脳血管障害や認知症等に起因する症候性てんかんが多い。症状はけいれんが少なく、非けいれん性の多彩な発作症状を示すためてんかんと診断され難い。

 多彩とされる症状には記憶障害が含まれ、物忘れ外来を受診することになりがちである。一方、認知症の診療に当たる医師にとって、てんかんは想定外であり、誤診が危惧される。認知症と紛らわしいてんかんとして先ず想定すべきは、一過性てんかん性健忘transient epileptic amnesia(TEA)である。またレビー小体型認知症dementia with Lewy bodies(DLB)では、意識レベルの動揺性があり意識減損を伴うCPSと類似する。DLBに特徴的なレム睡眠行動障害も睡眠中のCPSと類似するため側頭葉てんかんとの鑑別が必要である。

 著者所属の物忘れ外来では、てんかんと診断される症例が約1%存在するが、脳波上で発作間欠期てんかん性放電inter-ictal epileptiform discharge(IED)が捕捉される症例は約5%存在し、てんかんの合併の可能性がある。IED(+)の症例に対して抗てんかん薬anti-epileptic drug(AED)治療を行った場合、認知機能が改善する症例を度々経験する。IED(+)の50症例につき、AED投与前後の認知機能の変化を検討した結果を提示する。認知症とてんかんは併存する場合もあり、その発症や経過に相互に影響し合っている可能性があることを近年の研究から紹介する。

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© 2019 認知神経科学会
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