人間ドック (Ningen Dock)
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原著
健診受診者を対象としたALT(Alanine aminotransferase)の正常値の推定 -超音波診断による肝脂肪化例の除外の影響-
矢島 義昭後藤 和弘石井 秀和杉田 貴子佐藤 武敏戸塚 真弓黒沢 功
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キーワード: ALT, 正常値, 肝脂肪化, 音波診断
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2011 年 25 巻 5 号 p. 837-843

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抄録

目的:著者らはdifferential THI搭載超音波装置を用いた新しい脂肪肝の診断基準を報告したが,この診断基準を用いて肝脂肪化例のALT値について検討し,かつ軽度の肝脂肪化例をも完全に除外した“正常群”よりALTの正常値を再検討することにした.
対象と方法:当院の2009年度の健診受診者17,069名より無作為に1,000名を抽出し,下記の項目を除外して正常群を設定した.すなわち,①B,C型肝炎ウイルス陽性,②量にかかわらず晩酌の習慣,③薬剤の服用,④γ-GTP高値,⑤肝脂肪化例(軽症例を含む).用いた超音波装置は東芝のXARIO-XGで,5名の検査技師が撮影した静止画像を一人の超音波専門医が最終的に判定した.肝脂肪化の超音波診断は我々の基準に従った.
結果:上記の基準に該当する正常群は381名で,ALTの95パーセンタイルは17.4±12.0 IU/L(5.4~29.4)であった.検出された脂肪肝は172例(17.2%)であり,その約2/3が肝障害(ALT>30 IU/L)を示した.肝脂肪化例のALT値は脂肪化の程度が増すにつれて高値を示した.
結論:肝脂肪化例を完全に除外した正常群よりALTの正常値は≦30 IU/Lと推定された.軽症の脂肪肝が正常群の中に紛れ込んでいた結果,従来の正常値を底上げしていたものと思われた.

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© 2011 公益社団法人 日本人間ドック学会
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