抄録
目的:経鼻内視鏡において,観察範囲の洗浄を自動送水装置で行った場合と用手的に行った場合とで,検査時間および検査時の鼻痛の程度に違いがあるか否かについて検討した.
方法:経鼻による上部消化管内視鏡検診を受けた246名を対象とし,用手的に洗浄を行った62名を用手洗浄群,自動送水装置を用いて洗浄を行った184名を自動送水群とした.検討項目は,第一にスコープの挿入から抜去までの検査時間,第二にアンケート調査から検査時の鼻の苦痛度を4段階で評価した.
結果:平均検査時間は,用手洗浄群は561±123秒であったのに対して,自動送水群では503±98秒であり,自動送水群は用手洗浄群に比べて有意に検査時間が短縮した(p = 0.0002).検査に伴う鼻の苦痛度は,用手洗浄群でgrade 0(苦痛はなかった)が83.9%,grade 1(どちらともいえない)が16.1%,苦痛ありのgrade 2およびgrade 3はともに0%であった.一方,自動送水群では,grade 0が86.4%,grade 1が13.6%,grade 2およびgrade 3はともに0%であった.自動送水群でgrade 0の割合が高い傾向にあったが,両群間で鼻の苦痛度に有意差を認めなかった(p = 0.624).
結論:経鼻内視鏡検査における自動送水装置の活用は,用手洗浄と比較して鼻の苦痛度に差はなかったものの検査時間が有意に短縮し有用であると考えられた.