人間ドック (Ningen Dock)
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原著
人間ドックで発見された肝細胞がん症例の検討
大洞 昭博小島 孝雄加藤 隆弘森本 泰隆福田 信宏大島 靖広渡辺 一敏中村 清下村 順子大熊 晟夫出口 冨美子
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2013 年 28 巻 1 号 p. 78-83

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抄録

目的:通常,肝細胞がん症例の多くはウイルス性肝炎に起因し,定期通院中の検査で発見される場合が多い.しかし,時として健診にて初めて発見されるものもある.今回,当院総合健診センターの人間ドックの腹部超音波検査にて発見された肝細胞がん症例について検討した.
対象:当院総合健診センターにおいて2000年から2010年までに腹部超音波検査を受けた受診者107,652例(男性65,499例,女性42,153例,年齢18歳~90歳で平均48.8歳)を対象とした.
結果:HBs抗原陽性者1,543例(全受診者の1.43%),HCV抗体陽性者713例(0.66%)で,その期間に発見された肝細胞がんは,6例で全例男性であった.77歳の高齢者を除けば平均年齢53.6歳(49歳~59歳)であった.原疾患はC型肝炎1例,B型肝炎5例であった.生活歴は,全例飲酒者で喫煙者は4例であった.血液生化学検査所見では,ASTやALT値の異常よりもZTT値異常例が多かった.アルブミン値や血小板数からは,肝予備能はよいことが予測された.指摘した腫瘍の大きさは,6~27mm(平均14mm)であった.治療は,2例に経皮的ラジオ波熱焼灼術が,4例に外科的切除が施行された.
結語:肝炎ウイルスマーカー陽性の健診受診者では,AST,ALT値や血小板数が基準値内であっても,慢性炎症がある場合が多く,専門医療機関へ強く受診推奨すべきと考える.また,健診にて発見される肝細胞がんは,根治性の高い治療が選択できる可能性が高く,健診による早期発見の意義は大きいと考えられた.

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© 2013 公益社団法人 日本人間ドック学会
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