抄録
目的:人間ドック・健診ではさまざまな放射線検査が実施されるため,放射線検査に関連するインシデント・アクシデント発生の防止は,安全で良質な人間ドック・健診業務を実施するためにきわめて重要である.今回,放射線撮影室に関連して発生したインシデント・アクシデント事例の発生要因と再発防止について検討し,人間ドック・健診で放射線検査を実施する時の留意点について考察した.
方法:日本医療機能評価機構のウェブサイトの公開データ検索を用いて,放射線撮影室に関与して発生したインシデント・アクシデント事例を抽出し,発生概要から発生要因と再発防止について検討した.
結果:2012年5月時点で放射線撮影室をキーワードとして検索し,抽出された65例を対象とした.発生の状況は,放射線検査前12例,検査中14例,検査後39例であり,患者への影響は軽微なものから重篤なものまで,さまざまであり,報告者は放射線技師,医師,看護師等,多職種がみられた.
結論:放射線検査は,業務プロセス上,複数の職種・職員が関与しているため,放射線撮影室に関与するインシデント・アクシデントの再発防止は単一職種や個人の努力のみでは,必ずしも容易ではない.安全で良質な人間ドック・健診に関わる放射線検査を実施するためには,多職種協働によるインシデント・アクシデントの未然防止システム構築の必要性が示唆された.