2016 年 30 巻 5 号 p. 809-821
我々日本人の死因の1位はがんであるが,動脈硬化性疾患である心および脳血管病変を合わせると,その割合はがんに匹敵する.そのため人間ドック健診や日常診療の最大の目的はがん対策と動脈硬化対策であるといえるが,どのような検査を動脈硬化対策の基本検査として実施するべきかについてはまだ明確になってはいない.2008年に出版された健診判定ガイドライン改訂版では,動脈硬化健診のあり方についての試案を作成した.その際に,最も意図したことは,人間ドック健診の標準検査として動脈硬化検査を定着させていくことであった.エビデンスがある程度確立されていることに加えて,施設間の機器や測定手技の精度の違い,検査にかかる時間や費用なども考慮に入れ,全国の施設で取り入れ可能な検査であることを重視した.
動脈硬化対策において実施するべき検査については,自由診療という枠組みが利用できることも考慮しながら,一方で,任意型健診といえどもその大多数が自治体等の補助や企業・会社等の福利厚生のもとで実施されている現実も含めて考える必要もある.
現在有用であると考えられる検査について,血管機能や形態的変化を調べる検査法を中心に,動脈硬化リスクを評価するバイオマーカー検査もあわせて,最近の動向と我々の施設でのこれまでの検討を含めながら概説する.