抄録
目的:大腸がんスクリーニングにおける便潜血検査,特に便ヘモグロビン定量値の有用性について検討した.
対象:平成19年1月から平成26年9月までの期間中,当センターにおける人間ドックにて,便潜血検査を施行した受診者のべ36,284人のうち,便潜血検査が陽性(便ヘモグロビン定量値のカットオフ値は80ng/mL)は2,719人(7.5%)であった.被検者のうち日生病院で全大腸内視鏡検査(total colon fiber:TCF)が施行された617人を対象として解析した.
結果:大腸がんが発見された症例は31人(男性19人,女性12人),5.0%であった.大腸がん群と非大腸がん群との便ヘモグロビン定量値を検討してみると,大腸がん群の便ヘモグロビン定量値(504±332)は非大腸がん群(326±285)に比し,有意に高値であった(p=0.001).便ヘモグロビン定量値別に大腸がん症例数をみると,便ヘモグロビン定量値が900ng/mL以上の症例では88人のうち11人(12.5%)に発見され,900ng/mL未満の症例より高率であった.
結論:便ヘモグロビン定量値は大腸がん症例では有意に上昇しており,大腸がんのスクリーニングに有用と考えられた.また,便ヘモグロビン定量値が900ng/mL以上では高頻度に病変がみつかった.さらに,より進行したがんでは便ヘモグロビン定量値が高値の傾向を示した.大腸がんスクリーニングには,便ヘモグロビン定量値も考慮に入れることが必要と思われる.