抄録
目的:人間ドックおよび健康診断受診者で,緊急対応が必要と思われる心電図波形を認めた場合,より確実な情報提供のための緊急報告書による運用を開始し,その実績について検討した.
方法:心電図パニック値に該当する異常所見を認めた担当技師は,心電図所見,自覚症状の有無,治療および投薬の状況,前回との波形変化について所定の緊急報告書に記入し,速やかに医師へ報告する.その際,検査続行の可否も含め,それ以降の対応について指示を仰いでいる.このような緊急連絡の対象となった症例についてその後の経過を確認した.
結果:2012年7月~2015年2月,当センターで心電図を受診した延べ132,577例のうち,要精査となったものは2,009例(1.5%)であり,そのうち25例が医師への緊急連絡を必要とした.その後,診察が必要と判断された15例は医師との面談により,6例が受診項目に含まれていた胃X線検査を中止,8例が当日または翌日に当院の循環器内科受診となった.その後の経過について追跡が可能であった10例では,心カテーテル検査で冠動脈に90%の狭窄を指摘されステント留置に至った例や,ペースメーカー植込み術が施行された例があり,また5例に対してアブレーションによる処置が行われ,投薬開始または経過観察となる症例が3例みられた.
結論:医師への緊急報告体制を整えることにより受診者の安全が確保でき,早期に治療へ移行することができると考えられた.