2017 年 31 巻 5 号 p. 698-708
目的:胃X線画像によるHelicobacter pylori(Hp)感染胃炎所見の有効性を検討するとともに,画像によるHp感染胃炎所見の有無とABC分類とを対比し,ABC分類の偽A群(A群中のHp感染胃炎)を減らすための,Hp抗体価とペプシノゲン(PG)法の至適な判定基準を明らかにすることを目的とした.
方法:平成26年6月から平成27年5月までの人間ドックにおいて,胃X線検査とABC検診を同時に受けた1,153例を対象とし,胃X線画像の胃小区像および皺襞の分布と性状によるHp感染胃炎所見と,Hp抗体価・PGⅠ値・PGⅡ値・PGⅠ/Ⅱ比との相関性を比較検討した.
結果:ABC分類のHp感染陽性群では,97%がX線胃炎所見陽性を示したが,Hp感染陰性にも胃X線の胃炎所見陽性をみる偽A群が26%みられた.Hp抗体価については,60歳代以上のみHp抗体価3U/mL以上の陰性高値もHp陽性,PG法ではPGⅠ値30ng/mL以下,PGⅡ値15ng/mL以上,PGⅠ/Ⅱ比4以下のいずれかを満たす場合をHp陽性とするABC分類の修正案は胃がんリスク検診マニュアル2014のABC分類に比べ,A群が73%に減少し,A群中の胃炎所見陽性(偽A群)も60%の減少が得られた.
結論:ABC検診のHp感染陽性と非常に高い一致率を示した胃X線画像所見に,年齢を加味したHp抗体価の基準値と,新たなPG法の判定基準値を追加するABC検診を併用することにより,Hp感染診断の精度が向上した.人間ドックでは,胃X線検査とABC検診を併用し,より正確なHp感染胃炎の診断を行い,Hpの情報提供,除菌勧奨,除菌後の検診等の事後指導に取り組むことが重要である.