2018 年 33 巻 1 号 p. 22-28
目的:人間ドック健診では継続的なPSA検査が行われるので,各人のPSA生長曲線を得ることができる.我々は,黒沢病院人間ドック症例を用いて,前立腺がん患者のPSA生長曲線と全受検者のPSA生長曲線を比較検討した.
方法:全受検者のPSA生長曲線(PSA値のパーセンタイル曲線)の検討は,2002年から2015年までに黒沢病院健康管理センターで前立腺がん検診を受検した30歳から79歳までの男性のべ138,392人で行った.前立腺がんのPSA生長曲線の検討は,2002年から2015年に発見された69症例で行った.
結果:前立腺がんのPSAの生長曲線は健常人のPSA生長曲線とは異なり,Ⅰ相(水平相),Ⅱ相(緩徐上昇相),Ⅲ相(急速上昇相)がみられた.前立腺生検直前PSA値,PSA上昇期(Ⅱ相+Ⅲ相)ダブリングタイム,Ⅲ相の期間が病理学的悪性度(グリーソングレードグループ)に影響を与えた.
結論:受検者のPSA生長曲線にⅢ相が観察され基準値を超えた場合には,速やかに泌尿器科医への受診を勧めることが大切である.