人間ドック (Ningen Dock)
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33 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 加藤 智弘, 伊藤 恭子
    2018 年33 巻1 号 p. 7-21
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー

     近年の大腸がんの高い罹患率により大腸がんによる死亡率も高くなり,現在のところ,がん死亡率でみると,男性では3位,女性では1位となっており,診断・治療とともに,その発見も重要な課題項目といえる.その点で大腸がん検診スクリーニングは大きな役割が期待されている.しかしながら,毎年ある程度の受診件数があるものの,精密検査対象者の受診率は他のがんと比較すると圧倒的に低い.このような背景のもと,本稿では大腸がん検診スクリーニングに関する現状と,関連する多くの検査手段について概観した.すなわち,検診のうち,対策型検診で中心となる便潜血検査法について,また,任意型検診,あるいは対策型検診の精密検査対象者への検査として,従来の検査法に加えて,新たな有力な検査法のいくつかについても概説を行った.これらの検査のメリット・デメリットを十分に理解することで,検診受診者に対しては,その情報を還元することにより,結果として,大腸がんの発見,ひいては死亡率の低下をもたらすことに繋がると思われる.

原著
  • 吉原 尊樹, 齋藤 隆, 加瀬 嘉明, 山中 英壽, 戸塚 真弓, 石井 秀和, 曲 友弘, 黒澤 功, 鈴木 慶二, 大木 亮, 伊藤 一 ...
    2018 年33 巻1 号 p. 22-28
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー

    目的:人間ドック健診では継続的なPSA検査が行われるので,各人のPSA生長曲線を得ることができる.我々は,黒沢病院人間ドック症例を用いて,前立腺がん患者のPSA生長曲線と全受検者のPSA生長曲線を比較検討した.

    方法:全受検者のPSA生長曲線(PSA値のパーセンタイル曲線)の検討は,2002年から2015年までに黒沢病院健康管理センターで前立腺がん検診を受検した30歳から79歳までの男性のべ138,392人で行った.前立腺がんのPSA生長曲線の検討は,2002年から2015年に発見された69症例で行った.

    結果:前立腺がんのPSAの生長曲線は健常人のPSA生長曲線とは異なり,Ⅰ相(水平相),Ⅱ相(緩徐上昇相),Ⅲ相(急速上昇相)がみられた.前立腺生検直前PSA値,PSA上昇期(Ⅱ相+Ⅲ相)ダブリングタイム,Ⅲ相の期間が病理学的悪性度(グリーソングレードグループ)に影響を与えた.

    結論:受検者のPSA生長曲線にⅢ相が観察され基準値を超えた場合には,速やかに泌尿器科医への受診を勧めることが大切である.

  • 鎌田 智有, 春間 賢, 眞部 紀明, 山中 義之, 藤本 壮八, 井上 和彦, 高尾 俊弘
    2018 年33 巻1 号 p. 29-34
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー

    目的:胃内視鏡検診受診者を対象に,「胃炎の京都分類」を用いてH. pylori感染動態を検討する.

    方法:胃内視鏡検診を受検した460例(男性251例,平均年齢51.4歳)を対象とした.H. pylori感染については,胃粘膜萎縮がなく,胃体下部小彎にRAC(regular arrangement of collecting venules)が観察される症例を未感染(疑い),びまん性発赤と萎縮を認める症例を現感染(疑い),萎縮を認めるがびまん性発赤を認めない症例を既感染(疑い)として,年齢別の感染動態の頻度,地図状発赤の出現頻度および地図状発赤と胃粘膜萎縮との関連について検討した.

    結果:胃内視鏡所見からH. pylori感染を診断した結果,未感染295例,現感染50例および既感染115例であった.年齢別の各群の頻度は未感染では39歳以下が85.0%(51/60),以後加齢とともにその頻度は低下した.一方,既感染では加齢とともにその頻度は高くなり,60~79歳では37.2%(32/86)であった.既感染のうち地図状発赤の出現頻度は22.6%(26/115)であり,高度萎縮を伴っていた.

    結論:「胃炎の京都分類」は,胃がんの低リスクと高リスクを選定することが可能であった.特に,高度萎縮を背景とする地図状発赤を認める症例では,除菌後の胃がんを考慮した定期的なサーベイランスが必要である.

  • 蓼沼 知之, 片山 佳代子, 軸屋 良介, 橋爪 章仁, 安井 将人, 水野 伸彦, 梅本 晋, 村岡 研太郎, 河合 正記, 三浦 猛, ...
    2018 年33 巻1 号 p. 35-42
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー

    目的:前立腺がん患者と健常人の血漿中アミノ酸濃度の統計解析により開発されたアミノインデックス®がんリスクスクリーニング(AICS(前立腺))は,前立腺がんの早期発見のためのスクリーニング検査として実用化されている.一方,血漿中アミノ酸変化と前立腺がん発症との因果関係については,十分に解明されていない.本報告では,AICS(前立腺)のスクリーニング検査としての特性の明確化を目的として,前立腺がん患者で前立腺全摘除術を施行した症例を対象に,AICS(前立腺)の術前後における変化について検討した.

    方法:前立腺がんに対して前立腺全摘除術を施行し,現在まで生化学的再発が認められない64例を対象とした.術前1週以内,術後約半年後に午前中空腹時採血を行い,血漿分離後に液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS)を用いてアミノ酸濃度を測定し,AICS(前立腺)値を算出し,術前と術後の変動を解析した.

    結果:術前AICS(前立腺)値がランクBまたはCであった56症例中49例(88%)で術後値は低下を示し,ランクに関しても56例中42例(75%)で低いランクに移行していた.さらに,術前ランクCであった42症例に限ると39例(93%)で術後値は低下を示し,術後ランクは42例中33例(79%)で低下していた.

    結論:前立腺全摘除術後では,AICS(前立腺)値およびランクは術前よりも低下することから,AICS(前立腺)は前立腺の担がん状態を反映したスクリーニングマーカーであることが示唆され,その有用性が示された.

  • 馬嶋 健一郎, 島本 武嗣, 田島 太一, 村木 洋介
    2018 年33 巻1 号 p. 43-49
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー

    目的:大腸CT読影法の標準化における課題に5mm以下の微小ポリープをどう扱うかという問題がある.本研究は,読影標準化への一助とするため,微小ポリープの診断精度,読影に参考となる因子,読影方針について検討した.

    方法:人間ドックの大腸CT検査で指摘された微小ポリープ50病変について,全大腸内視鏡検査をゴールドスタンダードとして陽性的中率を算出し,6mm以上のポリープと比較した.また,微小ポリープの診断に有用な因子を調査した.加えて,微小な所見をすべて詳細に読影した場合と,確信度の高そうな所見だけ詳細な読影を行う方針での読影時間を比較した.

    結果:ポリープ別の陽性的中率は,10mm以上100%(7/7),6mm以上62.5%(15/24),5mm以下28.0%(14/50)であり,5mm以下で有意に低かった.微小ポリープ同定の因子は,高さが有意な因子であった(カットオフ値1.5mm).読影時間中央値は微小所見をすべて詳細読影した場合18分,確信度の高そうな所見だけに詳細な読影をした場合14分であり有意差を認めた.

    結論:微小ポリープの陽性的中率は低かった.微小ポリープ診断にはポリープの高さが参考になることが示唆された.微小所見について確信度の高いものだけを拾うことで読影者の負担は減少すると考えられた.今後,本邦において,大腸CT検査における微小ポリープ読影の取扱についてコンセンサスが形成されることが望まれる.

  • 大渕 美帆子
    2018 年33 巻1 号 p. 50-54
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー

    目的:国が推奨する外国人メディカルツーリズムの一つとして,外国人を対象とした人間ドック(以下,外国人ドック)が現在多くの施設で実施されている.今回,当院で実施した外国人ドックの現状を報告するとともに,全体を通して発生した問題とその対策,今後の課題を検討した.

    方法:対象は2015年4月から2017年3月,当院で外国人ドックを受診した22名(男性14名,女性8名,国籍は全員中国)である.受け入れの事前に検討した4つの問題点①言語,②人間ドックメニュー,③契約,④事故対策の事後検証,ならびに⑤想定外の事象への対応を総括した.

    結果:①文書に関する問題は発生しなかったが,通訳が同時に複数箇所で呼び出された際に対応ができなかった.②人間ドックメニューは好評であった.③契約に関する苦情やキャンセルはなかった.④検査での事故は発生しなかった.⑤想定外の事態として,持病や人間ドックで指摘された疾病の治療希望,似た名前による受診者取り違え未遂,家族らが控え室をホテル代わりに使用する,閉所恐怖症による直前のMRI拒否,結果説明で「経過観察」の概念が伝わらず説明に苦慮したであった.

    結論:外国人ドックの課題は言語よりも文化や医療に対する概念の差であった.医療ツーリズムを発展して行くためには,日本独自の人間ドック文化を時代に合わせ進化させる必要があると考えられた.

  • 小林 未来, 森下 知代, 中野 求, 松山 薫, 杉田 智子, 塩村 惟彦, 佐橋 徹, 遠山 和成
    2018 年33 巻1 号 p. 55-61
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー

    目的:当施設では特定保健指導の積極的支援参加者に対し,食習慣・運動習慣の改善を図るためにフォローアップ検査を行っている.特定保健指導を受け,フォローアップ検査を実施した場合としなかった場合の検査データを比較し,その有効性を検討する.

    対象および方法:当施設で人間ドック,健康診断等を受けた積極的支援参加者のうち,翌年の健診データが得られた92人を対象とした.フォローアップ検査を実施した対象者を検査あり群,実施しなかった対象者を検査なし群とし,検査あり群におけるフォローアップ検査時との比較と,両群における翌年の健診データの変化・メタボリックシンドローム(MetS)減少率を比較した.

    結果:検査あり群において,フォローアップ検査時で腹囲,体重,BMIが減少し,中性脂肪,HDLコレステロール,空腹時血糖の改善がみられた.さらに,翌年の健診時においても体重の減少効果が持続し,中性脂肪,HDLコレステロールに対する効果の継続がみられ,MetS該当者減少率は33.3%であった.対して,検査なし群では有意な変化はみられなかった.

    結論:フォローアップ検査を実施した積極的支援参加者は,腹囲,体重が減少し,臨床検査値が改善した.特定保健指導におけるフォローアップ検査は対象者の意欲を高め,指導効果の向上に有効な手段である可能性が示唆された.

  • −より有効な特定保健指導の確立を目指して−
    石川 和克, 庵原 立子, 角掛 篤子, 吉田 由貴, 金田一 万里子, 藤舘 道代, 狩野 敦
    2018 年33 巻1 号 p. 62-68
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー

    目的:メタボリックシンドローム(MetS)の現況を明らかにし,腹囲正常で検査値異常を示す非メタボ高危険群(masked MetS)との臨床像の比較検討を行った.

    方法:2016年度の当センター受診者中,腹囲を測定した21,668名(男性13,126名,女性8,542名)を対象とした.

    結果:MetSは男性19%,女性3%に認められ,男女とも加齢とともに頻度が上昇した.masked MetSでは,男女とも収縮期および拡張期血圧の異常の頻度が高かった.臨床検査の平均値は,男性はMetSでは,LDL-C,中性脂肪,AST,ALT,γ-GTP,HbA1cが,masked MetSでは収縮期および拡張期血圧,HDL-Cが有意に高値であった.女性はMetSでは,γ-GTPが,masked MetSではHDL-Cが有意に高値であった.喫煙の頻度は男性でmasked MetSが高率の傾向を認めた(47.8% vs 41.8%).飲酒は,男性では,毎日がmasked MetSに有意に高率で(64% vs 50%)女性では飲酒しないがMetSに有意に高率であった(35.0% vs 0%).既往歴の種類および頻度には男女とも両群間に差は認めなかった.

    結論:MetSは,従来の保健指導の継続,masked MetSは,体質,家系の影響を考慮し,飲酒,喫煙などの保健指導を加味する必要性が示唆された.

症例報告
  • 宇賀神 卓広, 渡辺 美穂, 津戸 直樹, 藤沼 澄夫, 笹沼 英紀, 福嶋 敬宜
    2018 年33 巻1 号 p. 69-75
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー

     症例は64歳の女性.職域健診で便潜血が3年連続陽性だったが放置し,さらに,立ちくらみと排便時痛も出現したが放置していた.その後,貧血も指摘されて受診し,進行直腸がん,早期結腸がんと診断され,これらの治療前精査にて胆嚢がんも発見された.早期結腸がんに対して内視鏡的治療が予定されたが,その前処置で腸閉塞となった.人工肛門が造設され,その後,結腸がんに対する内視鏡的治療,胆嚢がんの手術が施行され,現在,直腸がんに対して化学療法が施行されている.

     近年,大腸がんは増加傾向にあるが,大腸がん検診の精検受診率は低い.また,地域検診に比し職域検診は精検受診率が低い.大腸がんの知識の啓発は受診意識の向上に繋がり,適切な受診勧奨と合わせて重要である.

     高齢化,画像診断の進歩に伴い,重複がんが増加傾向にある.大腸胆嚢重複がんは稀であるが,やはり増加傾向にある.がん検診でも,問診,理学・検査所見からがん好発・多発因子の有無を確認することが重要であり,健診医療従事者にも重複がんに関する知識は必要である.

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