2018 年 33 巻 1 号 p. 69-75
症例は64歳の女性.職域健診で便潜血が3年連続陽性だったが放置し,さらに,立ちくらみと排便時痛も出現したが放置していた.その後,貧血も指摘されて受診し,進行直腸がん,早期結腸がんと診断され,これらの治療前精査にて胆嚢がんも発見された.早期結腸がんに対して内視鏡的治療が予定されたが,その前処置で腸閉塞となった.人工肛門が造設され,その後,結腸がんに対する内視鏡的治療,胆嚢がんの手術が施行され,現在,直腸がんに対して化学療法が施行されている.
近年,大腸がんは増加傾向にあるが,大腸がん検診の精検受診率は低い.また,地域検診に比し職域検診は精検受診率が低い.大腸がんの知識の啓発は受診意識の向上に繋がり,適切な受診勧奨と合わせて重要である.
高齢化,画像診断の進歩に伴い,重複がんが増加傾向にある.大腸胆嚢重複がんは稀であるが,やはり増加傾向にある.がん検診でも,問診,理学・検査所見からがん好発・多発因子の有無を確認することが重要であり,健診医療従事者にも重複がんに関する知識は必要である.