人間ドック (Ningen Dock)
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喫煙の蛋白尿出現とeGFRの変化に対する影響およびその関連性:8年間の縦断分析
山川 久美枝阿部 惇中島 実映井上 基上野 光博
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2018 年 33 巻 3 号 p. 455-464

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抄録

目的:8年間の縦断分析により,喫煙の蛋白尿出現とeGFRの変化に対する影響およびその関連性を明らかにする.

方法:8年間喫煙習慣を維持し,観察開始時35~65歳,腎疾患治療・既往なく,血清クレアチニン0.56~1.03mg/dLの男性7,476人(喫煙2,954,禁煙2,471,非喫煙2,051)を対象とした.尿蛋白試験紙法にて1+以上の蛋白尿をUP+,±/–をUP–とした.対象者毎に年毎のeGFRの変化率(percent change in eGFR:以下,PCG)と,全経過のeGFR低下速度(eGFR decline rate:以下,GDR,最小2乗法による)を算定した.

結果:観察開始時,UP–群のUP+新出現では喫煙群の非喫煙群に対するハザード比は1.4であった.喫煙群のUP+出現率は,非喫煙群,禁煙群に比しeGFRの全域で高かった.UP+出現の有意危険因子は,喫煙,eGFRの低下,および血圧,BMI,糖代謝異常判定区分,HDL-C,中性脂肪,尿酸の上昇であった.GDR総平均は–0.48mL.喫煙群,禁煙群でUP–群よりUP+群が,また低い年齢層,高いeGFR層でGDR(絶対値)が大きかった.連続した3年間で1年目UP–,2年目にUP+になった群で有意にeGFRが低下し,そのなかで3年目にUP–の例ではeGFRが回復するが,UP+の連続出現例では低下した.PCG≦–25%,≧+25%の頻度は2.7%,6.6%であった.

結論:喫煙はUP+出現の危険因子である.GDRは低い年齢層,高いeGFR層,および喫煙者,禁煙者のUP+群で大きい.UP+の連続出現はGDR上昇の指標であり,喫煙はその危険因子の一つである.

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