2019 年 34 巻 4 号 p. 555-565
我が国では,平均寿命と健康寿命が延伸しているが,両者の間には乖離がみられる.死因として,がんが最も多いが,高齢になるにつれフレイルに陥る.このフレイルでは,サルコペニア,ロコモティブシンドロームが中核の臨床所見となる.介護を必要とする原因として,脳血管障害が最も多いが,転倒・骨折,関節疾患もみられる.糖尿病とがんとの関連が指摘されてきたが,近年,運動器病変と生活習慣病による動脈硬化症,心血管病変が,慢性炎症を共通とする病態により臓器間ネットワークを形成することが考えられるようになった.例えば,サルコペニアは,骨脆弱性骨折の危険因子になり,また心不全でも見出される.さらに,従来の骨密度低下による骨粗鬆症の概念に代わり,骨強度は,骨密度と骨質の和として把握されることが明らかにされた.骨脆弱性骨折は骨質の劣化でも生じる.例えば,糖尿病では,骨微細構造異常に加え,高血糖による酸化ストレス,糖化ストレスにより最終糖化生成物(AGEs)の増加,ホモシステイン高値により骨質が劣化する.また,インスリン抵抗性増加,アディポネクチン低下,オステオカルシン低下も加わり,骨脆弱性が低下するとともに,動脈硬化症が進展する.骨粗鬆症薬の研究結果も合わせ,骨と血管との臓器間ネットワーク,すなわち,骨血管相関が存在する.人間ドック健診では,健康寿命を延伸するために,この骨血管相関の視点も持つことが重要である.