2019 年 34 巻 4 号 p. 566-571
目的:空腹時血糖(FPG)100~125mg/dLでかつHbA1c値5.6~6.4%の糖尿病前症は糖尿病発症の高度リスク群であるが,その高リスク群で,体重,腹囲の減少した場合の糖尿病発症に対する予防効果を検討した.
方法:2007年4月1日から2010年3月31日までに富山県厚生連高岡健康管理センターを一日ドックとして受診し,以前に糖尿病を指摘されていないFPG100~125mg/dLかつHbA1c値5.6~6.4%で,2016年12月28日までにその後1回以上再診した男性425名(平均年齢59.5±9.3歳),女性358名(平均年齢59.9±8.2歳)を対象とした.体重,腹囲変化量は観察開始時と糖尿病発症時の差とした.糖尿病発症がない場合は,観察終了時の体重および腹囲の差とした.糖尿病の発症は,FPG126mg/dL以上でかつHbA1c値6.5%以上,または自己申告で医師に糖尿病と診断されたものとした.
結果:平均観察期間は6.0年であった.糖尿病発症ハザード比は体重減少率1%未満群1,1~4%未満群0.65(95%CI 0.37–1.12,p=0.12),4~7%群0.33(95%CI 0.15–0.72,p<0.01),7%以上群0.29(95%CI 0.15–0.58,p<0.001)であった.また,腹囲減少率別検討では,糖尿病発症ハザード比は腹囲減少率1%未満群1,1~4%未満群0.56(95%CI 0.29–1.06,p=0.07),4~7%群0.07(95%CI 0.01–0.51,p<0.01),7%以上群0.28(95%CI 0.12–0.68,p<0.01)であった.
結論:糖尿病前症では,体重や腹囲が4%以上減少されると糖尿病発症は有意に抑制されていた.