人間ドック (Ningen Dock)
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総説
我が国の胃がん対策における人間ドックの役割
井上 和彦
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2020 年 35 巻 1 号 p. 7-23

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抄録

 がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(厚生労働省健康局長通知:平成28年2月4日一部改正)により,胃がん検診の方法として,従来の胃X線検査に加え,上部消化管内視鏡検査(内視鏡)も認められた.人間ドックにおいては,以前から内視鏡を導入している施設も多かったが,今後内視鏡の果たす役割が増えると思われ,習熟した技術で被験者に優しい内視鏡を行い,良好な精度を保つ必要がある.一方,胃がん発生にヘリコバクターピロリ(Hp)感染とそれに伴う胃粘膜の萎縮や炎症が強く関与していることが明らかになっており,内視鏡や胃X線の画像検査では背景胃粘膜の評価も重要である.また,血清Hp抗体や血清ペプシノゲン値,あるいは,その組み合わせによる胃がんリスク層別化検査(ABC分類)も有用であろう.そして,Hp感染状態に応じて発生しうる胃がんの特徴を理解したうえで検査を行うことにより早期発見につなげることができる.さらに,保険診療によるHp除菌と協調して胃がん発生リスクを低下させることも積極的に行うべきであろう.我が国におけるHp感染率は速いスピードで低下しており,今後上部消化管疾患のスペクトルが変わることが予想され,その対応も望まれる.

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© 2020 公益社団法人 日本人間ドック学会
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