2020 年 35 巻 2 号 p. 155-163
目的:本研究は男性継続喫煙者の1秒率(forced expiratory volume % in one second: FEV1%)と%1秒量(% forced expiratory volume in one second: %FEV1)および慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)関連症状の変化を明らかにすることを目的とした.
方法:2010年に人間ドック受診男性2,454人から喫煙状況の欠損,呼吸器疾患,心疾患,不整脈,元喫煙者と喫煙と禁煙を繰り返す者を除外し,6年間の連続追跡ができた1,066人を対象とした.喫煙者をベースライン時の喫煙指数(Pack-years: Py)によりPy20未満群,Py20~40群,Py40以上群に分け,非喫煙者(Py0群)を含む計4群における呼吸機能の経年的変化を反復測定の共分散分析,COPD関連症状(咳・痰・息切れ)の経年的変化をCochran Q検定および各群の比較は多変量ロジスティック回帰モデルにより解析した.
結果:6年間のFEV1%の推定平均はPy40以上群(2.6%),Py20以上40未満群(2.3%),Py20未満群(2.3%),Py0群(1.4%)において,それぞれ有意に低下していた(p<0.001).%FEV1はPy20~40群とPy40以上群においてそれぞれ有意に減少し,各年のPy0群と比べて有意に低かった(p<0.001).Py各群の自覚症状の変化が有意にみられなかったが,Py0群に比べてPy40以上群の「よく咳・痰が出る」の割合が1年以降,「息切れしたり動悸がしやすい」の割合が3年以降のオッズ比で有意に高かった.
結論:Pyが高いほどFEV1%および%FEV1の低下が早く,年次低下率も大きい.しかし,Py40以上群を除いてCOPDの関連症状の出現が少なく,自覚症状のみではCOPD早期検出は困難であると示唆された.COPDの早期診断と重症化防止には,喫煙者全員に呼吸機能検査を推奨することが必要と考えられる.