2020 年 35 巻 2 号 p. 170-176
目的:無症状の成人では報告がまれな一過性高アルカリホスファターゼ(ALP)血症を人間ドックで経験した.アイソザイム検査の再検討を加えたのでその考察も含めて報告する.
対象:一日ドックを利用した30代前半の男性.原因不明の下痢,腹痛,皮疹,発熱で受診歴が以前あったが,人間ドック利用時は無症状であった.
結果:一日ドック受診時にALPが1,297U/Lと異常高値であったが,その他の検査は異常なかった.6日後に外来を受診し,ALPは591U/Lに低下し,14日後に327U/Lと正常化した.背景となる病態は特定されなかった.ALPアイソザイム検査では,人間ドック受診時の血清で一過性高ALP血症に特徴的なfast α2バンドを認め,経過とともに減少したが,14日後でもわずかに残存していた.
結論:無症状の成人においても一過性高ALP血症が起こりうる.その診断に際してALPがもし低下していてもALPアイソザイム検査は有用だろう.