抄録
目的:内臓肥満は生活習慣病発症の温床となり,脂肪肝(FL)は内臓肥満の表現型の一つである.女性ではインスリン抵抗性が男性に比べ高度だが,FLの診断率は低い.しかしながら閉経後には高コレステロール血症の合併が高率になるなど,閉経前後で状況は異なる.我々は一般人ロ集団における50代の男女に着眼し,加齢因子を極力除外してメタボリックシンドローム(metabolic syndrome:MS)の診断及びFLにおける閉経の影響を検討した.方法:対象は2000年9月から2004年11月までの人間ドック受診者50代男性175人,女性124人.超音波検査にてFLを診断し,女性は問診により閉経を確認した.婦人科系手術を受けた者は除外した.MSの診断はWHOの基準に従った.結果:50代正常群は男性100人,女性閉経前16人,閉経後93人,FL群は男性75人,女性 閉経前2人,閉経後13人であった.FLの診断率は女性では54歳を境に5.8%(3/52)から16.7%(12/72)へと増加し,閉経前女性の消失の時期とほぼ一致した.一方男性では50歳よりFLが増加し,54歳をピークにその後FLは減少し,女性とは全く異なる経年変化を示した.MSは閉経前では認めなかったが,閉経後では正常群で1人(1.1%),FL群で2人(15.4%)と閉経後,特にFL群で増加した.結論:女性は男性と比べFLの診断率は低いが,閉経を機にFL,MSともに増加し,FL増加の一因子として閉経の影響が示唆された.