抄録
目的:人間ドックにおける成人女性の鉄欠乏状態を早期発見する目的で血清フェリチンの有用性について検討した.方法:2002年5月から2003年12月の期間に当院の人間ドックを受けた成人男性1,046名,成人女性597名の血清フェリチンを測定した.鉄代謝検査の鉄欠乏状態に対する判定感度を比較検討した.鉄代謝検査,HBs抗原,HCV抗体,腫瘍マーカーの当院検査技術科における原価の概算を行った.結果:成人女性597名の内27%に鉄欠乏状態を認め,30歳から49歳の年齢範囲の女性受診者では鉄欠乏状態の頻度は39-42%と高かった.男性受診者1,046名では,鉄欠乏状態は2%に認められた.鉄欠乏状態を判定するための全ての血清検査の中で血清フェリチンが最も優れていた.当院検査技術科での原価計算によれば血清フェリチンの原価は腫瘍マーカーやHCV抗体とほぼ同等であった.腫瘍マーカーやHCV抗体は近年広く人間ドックで採用されている検査である.結論:以上の結果により,人間ドックにおける成人女性受診者に血清フェリチンの測定を行う事は費用効果が認められ有用と考えられる.成人女性の鉄欠乏性貧血は生活習慣病として予防するために鉄欠乏状態を早期に発見することは重要と考えられる.