抄録
目的:人間ドックにおける身体診察の有用性を再評価する目的で,胸部聴診に加えて腹部聴診も行うことにより,新たな疾患を検出できるか否かを試みる.方法:ドック受診者のうち高血圧治療中の者,あるいは高血圧の診断基準を満たす者に腹部聴診を行い,腎血管性高血圧の検出を試みた.結果:特徴的な腹部血管雑音を呈し,腎血管性高血圧を疑わぜる一例を経験したので症例を提示する.症例:60歳代男性.40歳頃から高血圧治療を受けているが,最近血圧コントロールが不良気味.前年も当院ドックを受診しているが,特別の指摘はなかった.今回のドックにおける腹部聴診で,臍左側に最強点を有し,高調性で持続の長い血管雑音を聴取.腎血管性高血圧を疑って行った腹部造影CTで左腎動脈起始部の高度狭窄と左重複腎動脈を認め,腹部大動脈造影,選択的腎動脈造影で両者を確認した。ステント留置による治療を考慮したが,腎シンチ・スキャンを用いた分腎機能検査や,選択的腎静脈サンプリングでのレニン活性に左右差を認めなかったことから,当面は薬物療法で経過を見ることとした.結論:聴診には,心血管雑音や肺雑音を呈する疾患の検出に,一般的なドックの検査内容では代替できない役割がある.その役割を再認識し,目的意識を明確にして聴診を活用することは,人間ドックにおいても重要であると考える.