抄録
薬疹の発生機序について,生体側の条件を臨床的,実験的に検討して次の結果をえた。薬疹患者で,体質的に抗体産生経が亢進しているという直接の証明はできなかつたが,誘発試験陽性の薬疹患者では,血清免疫グロブリン変動がめだち,被疑薬剤投与すると全例補体価が上昇し,過敏薬剤添加による白血球·血小板減少率の上昇がめだち,先天性素質に基づく感作状態の成立が予測された。また発症を促進する因子として,自律神経の関与は大きく,とくに副交感神経緊張状態は,皮膚の滲出性炎症傾向をたかめ,皮膚障害をもたらす。さらに一次的·二次的な肝障害,NH3処理機能の低下は,皮膚障害と悪循環を形成して発症を助長し,Chemical mediatorとしてのHistamineの関与も予測できた。すなわち薬疹の発生には生体の抗体産生能力の異常,抗原抗体反応に対する皮膚を含む生体諸臓器の反応性の亢進が大きな役割を演ずる。