抄録
掌蹠膿疱症48例から採取した86標本,汗疱状白癬1,汗疱疹3,手の貨幣状湿疹1例につき,組織学的検討を行ない,つぎの結果をえた。本症の成り立ちは乾癬型皮膚反応であつて,表皮内に特徴のある単房性膿疱の存在と,その周囲にspongiosisが見あたらないか,あるいは,極めてわづかしかないという点から湿疹と区別できる。本症の表皮の変化は滲出性炎症をもつ乳頭上の表皮中に生ずるspongiosis,altération cavitaireから水疱,膿疱,と,その強さに段階があり,これは真皮炎症の強さに対応する。乾癬に見られる不全角化,乳頭の延長,浮頭体上の表皮の菲薄化,乳頭の拡張,乳頭毛細管の拡張などは本症においても見られ,ただその程度が乾癬に比べて軽く,いわば量的の差である。膿疱の形成は,恐らくはじめに乳頭からの滲出液の侵入により,表皮細胞の変性,壊死をおこし,ついで白血球遊走,海綿状膿疱の段階を経て,これに強いexoserosisが加わつて膿疱が形成されると思われ,汗管は一次的には関与しないと思われる。汗疱状白癬の膿疱と本症のそれと区別できない像があつた。汗疱疹は,汗管と無関係な湿疹型反応で,本症とは明らかに区別できる。