抄録
患者は24才男子, 約10年前に外尿道口左側唇部ほぼ中央にある大豆大, 単発, 半透明の腫瘍に気づいたが, 自覚症を欠如するためそのまま放置していた。組織学的検索をおこない, 以下のことを推論した。
 1)本症は組織学的には海綿体部尿道粘膜からなる尿道嚢腫(urethral cyst)であり, 嚢腫内容に主眼をおくと, 尿道粘膜より発生した粘液嚢腫(mucous cyst)といえる。
 2)この嚢腫は, 尿道側管の先天的あるいは後天的異常により発生したと考えられる。
 3)外尿道口部と縫線部に発生する嚢腫の病因について若干の考察を加えた。