西日本皮膚科
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症例
Microsporum canisによるケルスス禿瘡
―東京大学におけるヒト,動物のM. canis感染症―
南光 弘子滝沢 清宏長谷川 篤彦
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1977 年 39 巻 3 号 p. 368-375

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抄録

後頭部を除く被髪頭部のほぼ全域と前額部にMicrosporum canisを原因菌とするケルスス禿瘡および顔面白癬と苔癬型白癬疹をともなつた静岡市在住の1才4カ月女児例を報告した。38.5℃の発熱, 不機嫌状態と血沈1時間値90, RA陽性, 高γ-グロブリン血症などを呈し, 皮疹軽快時これらも改善した。飼猫に脱毛性病巣があつたというが培養は不成功であつた。また, hair-baiting法により, 患家の庭土からM. gypseum, Trichophyton ajelloiのほかM. cookeiが得られた。本菌分離は本邦では比較的珍しい。一方, 当教室および当大学家畜内科におけるM. canis, 感染症を集計し(ヒト22例, 動物217例(猫164, 犬53)), ヒトと動物との関連性につき考察した。1976年(11月末まで)には動物およびヒトとも最高の数に達しており, 現在かなり蔓延状態にあることを伺わせた。病型はケルスス禿瘡5例, 頭部浅在挫性癬2例, 斑状小水疱性白癬17例(自験例は3型合併)で, ペットの世話をする成人女子の露出部に多発する傾向がみられた。

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© 1977 日本皮膚科学会西部支部
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