1978 年 40 巻 2 号 p. 276-284
昭和49年, 50年の2年間に433例の毛包虫異常寄生例を経験した。昭和50年に来院した298例のうち175例(58.7%)にステロイド軟膏の常用が確認され, とくにいちじるしい寄生があつた63例では56例(88.8%)が半年から7年におよぶ常用を行なつていた。異常寄生は女子顔面再発性皮膚炎の症状を示すものに多く, ざ瘡様丘疹や細小血管拡張をみる症例にも多く認められた。Demodex folliculorum(Simon)は顔面の各部位で検出されるが, D. brevis(Akbulatova)は酒〓の状態を示す鼻部に高率に検出された。ステロイド軟膏の常用が毛包虫の異常寄生を起す原因については, 皮膚表層部の炎症とその消退のくり返しが, 本来は静的である毛包虫のlife cycleを動的なものへと変換させるために, 異常繁殖をおこすのではないかと想像している。