1979 年 41 巻 4 号 p. 638-646
75才男子に生じたclear cell acanthomaの1例を報告した。肉眼的には粗大, 凹凸不平, 一部糜爛状をていする比較的特徴のない腫瘤であつたが, 組織学的には, 細胞質が明るく, PAS染色強陽性, ジアスターゼ消化性の顆粒を多数ふくむ, やや大型の有棘細胞の集団がみとめられた。それらの細胞を電顕的に観察すると, 1) 細胞質内における多量のグリコーゲンの沈着, 2) 良好な発達を示す粗面小胞体, 3) 発育の不充分なmitochondria, 4) tonofilament, desmosomeの細胞内における存在, 5) lysosome様顆粒の存在, などの所見がみとめられ, glycogen顆粒の細胞質内における増加とともに細胞間腔が開大し, tonofilament, desmosomeの減少など変性壊死の傾向が著明となる所見が認められた。著者らは, 本症の本態は退行変性をともなう表皮細胞由来の良性腫瘍であると考えた。