1981 年 43 巻 2 号 p. 230-241
Sporothrix schenckiiの菌体から稀塩酸で加水分解抽出し,ピクリン酸沈澱により抗原の精製を行なつた。その化学組成は90%以上が蛋白質からなり,残りは微量の糖や核酸であつた。その抗原活性は酸,アルカリ,熱などの物理化学的な影響にたいして非常に安定性が高く,免疫動物を使つたMIF試験や皮内反応においても特異性の高い遅延型反応活性を示した。一方,蛋白分解酵素で処理すると抗原活性が消失することから遅延型反応活性は蛋白に依存していることも解つた。次に,その抗原と従来使用されている培養濾液抗原(スポロトリキン)とを使つて,スポロトリコーシスの患者に皮内テストを試み,特異反応の比較検討を行なつた。反応活性において両抗原の間に差はほとんどなかつた。したがつて,臨床においてもこの精製された蛋白性の抗原は十分使用できるし,in vitroの遅延型反応にも応用できると考える。