抄録
昭和53年1月より昭和56年12月まで島根県立中央病院皮膚科を受診し, 化粧品による皮膚障害が疑われた54例に持参させた化粧品を用いて貼布試験を行つた。疾患別では, 女子顔面黒皮症3例, 肝斑3例, 湿疹·皮膚炎(色素沈着群)9例, 湿疹·皮膚炎(非色素沈着群)39例であり, 年令別では20才代, 30才代が大半を占めていた。貼布試験を行つた1,259個の化粧品を基礎化粧品類, メイクアップ化粧品類, クレンジングクリームおよび洗顔料類, 頭髪化粧品類, 洗髪用化粧品類に分けて陽性率を検討した。その結果, 基礎化粧品類とメイクアップ用化粧品類はともに10%前後の陽性率であり, 大差は認められなかつた。クレンジングクリームおよび洗顔料類はclosedの場合は陽性反応を示したが, openでは全例陰性であつた。被験者の素因を調べたところ約1/5がアトピー素因を有していた。なお約半数の症例で過去にステロイド外用剤を用いていた。皮疹別では, 色素沈着群は非色素沈着群に比べて比較的高年令層に多く, かつ使用化粧品数も平均34.9個と約2倍であつた。貼布試験の結果を参考にして注意深く化粧品を使用させ, 多くの症状改善例をみた。