1984 年 46 巻 1 号 p. 326-330
66才男子。3年前左腸骨部の灸をすえた跡に糜爛性皮疹が出現したが放置, 漸次拡大隆起し, 易出血性となつた。初診時, 黒褐色の角化性隆起性痂皮を付着した紅斑性局面を呈し, 大きさは20×35mmで類円形であつた。病理組織学的に典型的Bowen病の像を呈した。自験例は, 新しい治療手段として, 大出力で浸透能と拡散能にすぐれたneodymium: yttrium-aluminium-garnetレーザーによる試験的照射を行つた。10∼15W照射部位には一部再発を認めるも, 20W照射部位は6ヵ月後の現在も再発を見ない。以上の結果より, Bowen病においては少なくとも20Wの出力が必要と思われた。なお本療法は, 現段階ではまだ多くの課題を有するが, その特質を生かした各種皮膚疾患への応用が期待され, 今後大いに検討されるべき方法と思われる。