抄録
乳幼児の手足を中心とする四肢末端に, 難治性の小水疱と膿疱を生ずるacropustulosis of infancyの1例を報告した。生後4ヵ月男児の手掌, 足蹠に生後2ヵ月頃より膿疱が出現し, 膿疱は約2週間で消退するが再発を繰り返した。膿疱の細菌培養, 真菌鏡検はともに陰性であり, 疥癬虫は検出されなかつた。組織学的には, 表皮内に単房性膿疱を認め, 膿疱内には多数の多核白血球がみられた。ステロイド外用は効果がなく, 2才頃より膿疱の新生はなくなり自然寛解した。自験例にて鑑別すべき疾患として, 掌蹠膿疱症, 疥癬があげられる。掌蹠膿疱症とは発症年令の点で相違があるが, 組織像は光顕, 電顕ともに類似しており, 乳幼児に掌蹠膿疱症が存在すれば鑑別は困難である。また自験例では, 家族内に疥癬患者はなく, 皮疹部より疥癬虫が検出されなかつたので疥癬は否定した。