1984 年 46 巻 5 号 p. 1104-1109
23才女子。15才頃より両側下腿に樹枝状紅斑が出現し, 18才頃より夏期に両側足関節部に有痛性潰瘍, さらに上肢にも樹枝状紅斑を見るようになつた。両側足関節部にはatrophie blancheと考えられる局面, 小瘢痕, 点状出血斑があり, 紅斑部の生検像で真皮皮下脂肪織境界部に核塵, 好中球の浸潤を見るnecrotizing vasculitisの像が認められ, 直接免疫蛍光法にても同部にIgM, C1q, C4, C3c, フィブリノーゲンの顆粒状沈着を認めた。血液生化学的には問題なく, connective tissue diseaseなどの合併はないと考えた。臨床像はFeldakerら(1955)の報告したlivedo reticularis with summer ulcerationに一致するが, 組織学的にはperiarteritis nodosa cutaneaも考慮される症例である。文献的にlivedo reticularisで血中免疫複合体が証明された報告, livedo reticularisの初期病変にleukocytoclastic vasculitisの存在を示す報告もあり, 自験例でも組織採取1週間後に同様皮疹が梗塞病変に変化したことも含め, livedo reticularis with summer ulcerationの発症に免疫複合体を含めた免疫学的機序の関与, 初期病変でのnecrotizing vasculitisの存在, および本症とperiarteritis nodosa cutaneaとの関連について考えた。一方, livedo病変での組織採取に当つては, 初期病変部の検索と, 脂肪織を含めた深部組織の採取の必要があることを強調した。