西日本皮膚科
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治療
イブプロフェンピコノール含有クリームの尋常ざ瘡における臨床効果の検討
早川 律子松永 佳世子蜷川 よしみ伊藤 直子
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1985 年 47 巻 5 号 p. 899-908

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抄録
イブプロフェンピコノール(IPPN)はイブプロフェンの2-, pyridinemethanol esterであり, イブプロフェンより優れた抗炎症作用を有し, 経皮投与されると皮内で約半量がイブプロフェンに分解されるが, 残りの半量はイブプロフェンピコノールのまま存在する。またIPPNはP. acnesよつて引き起された白血球遊走を阻止し, P. acnesのリパーゼ活性を阻害する。IPPNを5%配合したイブプロフェンピコノールクリームのざ瘡に対する効果と安全性を評価するためにopen trialによる予備試験を施行した後, 基剤との二重盲検左右比較試験を施行した。対象としたざ瘡は中等症ないし軽症で抗生物質, ホルモン剤などの投与を必要としない症例に限つた。また症候性ざ瘡も対象から除外した。結果: (1)予備試験では12例の尋常ざ瘡を対象とし朝夕2回外用させた。臨床経過の判定できた10例の4週後の判定は有用3例, やや有用4例であつた。(2)二重盲検左右比較試験は20例の尋常ざ瘡を対象とし朝夕2回, 右側には右用クリームを左側には左用クリームを外用させた。試験は, 8週間を目標に最低4週間観察した。試験終了後にkey openし集計した。IPPNはざ瘡の皮疹を有意に減少させ, とくに丘疹に対して有用であつた。しかし顔面皮表脂質量および皮表脂質中の遊離脂肪酸量の減少は認められなかつた。副作用は予備試験で1例, 二重盲検左右比較試験で1例みとめられたが, いずれも軽度であつた。
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© 1985 日本皮膚科学会西部支部
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