西日本皮膚科
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47 巻, 5 号
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図説
綜説
症例
  • —Poro, Poro-Duct Carcinoma—
    麻生 和雄, 近藤 慈夫, 穂積 豊
    1985 年 47 巻 5 号 p. 819-828
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    44才女子頭部のeccrine porocarcinomaと58才女子左大腿部に生じ, 所属リンパ節転移のみられたエクリン汗器官癌2例を報告した。病理組織学的, 電顕的検索で前者はeccrine porocarcinoma, 後者はeccrine poro-duct carcinomaと診断した。Eccrine poro-duct carcinomaの定義はなお曖昧である。Eccrine porocarcinomaおよび文献例を検討しporo-duct carcinomaは表皮·真皮を一単位として発生するエクリン汗器官癌がその中に含まれ, 自験例はそのtypeに相当すると考察した。
  • 小林 まさ子, 長谷川 隆, 藤田 優, 松崎 理, 長尾 孝一
    1985 年 47 巻 5 号 p. 829-832
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    39才男子の上口唇に発生したmucoepidermoid tumorの1例を報告した。左上口唇唇紅部より皮膚側, 粘膜側におよぶ2.6×2.2cmの腫瘤で中央に潰瘍を伴う。組織学的にepidermoid cellsを主とした小腫瘍胞巣の密な浸潤を認め, mucous secreting cellsやintermediate cellsを混じる。一部では大型嚢腫様構造をとるが, 一部では筋層内への浸潤性増殖やリンパ管内浸潤を認めた。本症は低悪性型でも再発を繰り返し転移をきたす場合もあり, 再発のないよう充分な切除を行うことが必要である。
  • 松川 中
    1985 年 47 巻 5 号 p. 833-835
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    13才男児の右コメカミにみられた石灰化上皮腫の1例を報告する。約10年前に右コメカミの腫瘤に気づいた。やや大きくなつた。腫瘤は皮下に位置し, 大きさは径2.1cmで, 円盤状を呈していた。組織学的には境界鮮明な皮下腫瘤で, 著明な骨組織といわゆるshadow cellの集塊および間葉組織よりなつていた。自験例を含めた本邦における骨化きたした石灰化上皮腫27例について統計的に観察し, 骨化の機序について若干の文献的考察を加えた。
  • —本邦報告例についての検討—
    乃木田 俊辰, 佐藤 敬子, 前川 嘉洋, 荒尾 龍喜
    1985 年 47 巻 5 号 p. 836-840
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    43才女子の頭頂部, 38才女子の頭頂部および左側頸部(多発例), 44才男子の左頬部に生じた3例のtrichilemmal cystについて報告し, 併せて自験例を含めた本邦における36例について統計的に観察した。性別では男子13例, 女子15例(詳細不明8例), 年令は19才から80才までで, 40才から60才代が最も多く全体の約60%を占めた。欧米の報告では, 多発例が約70%にみられるが, 本邦では単発例23例, 多発例5例(2例は白人)で, 日本人の多発例は3例にすぎなかつた。嚢腫内の石灰化は約42%にみられ, 欧米の報告の約2倍であつた。悪性化の症例は1例のみであつた。
  • 富田 敏夫, 鈴木 正, 佐々木 亮, 石川 研二, 田嶋 公子, 池田 重雄
    1985 年 47 巻 5 号 p. 841-848
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    53才男子の左大腿外側に発生し, 所属リンパ節転移を伴つたtrichilemmal carcinomaの1例を報告した。臨床上, Bowen癌を疑い生検により本症と確定診断を下した。組織学上, 腫瘤辺縁の局面ではfollicular Bowen’s diseaseの像を呈し, 腫瘤部ではtrichilemmal carcinomaの所見がみられた。リンパ節転移巣には, 原発巣と同様の組織所見が認められた。
  • 佐藤 敬子, 吉永 愛子, 宮本 裕二, 木藤 正人
    1985 年 47 巻 5 号 p. 849-852
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    35才男子, 35才男子, 3才女児, 48才女子のpiezogenic pedal papules(以下PPPと略記)の4例を報告した。症例1は体重増加が認められるころより症状が顕著となり, 疼痛を伴うようになつた。症例2, 3は父娘の例であり, ともに疼痛は認められなかつた。また症例3は, 3才女児例で今までの報告では最年少であつた。症例4は, 偶然PPPを指摘された症例で生検を行つた。併せてPPPの臨床病理学的概念について文献的考察を行つた。
  • 鶴町 和道, 木村 康隆, 向井 秀樹, 加藤 一郎
    1985 年 47 巻 5 号 p. 853-857
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    45才女子の口唇, 腰部, 両上腕に発症したlupus erythematosus profundusを報告した。病巣部表面に一部DLEを伴い, 抗核抗体陽性, 血中免疫複合体陽性および蛍光抗体直接法にて表皮真皮境界部並びに血管壁に免疫グロブリン, 補体の沈着を認めた。
研究
  • —基底細胞腫—
    川田 暁, 近藤 靖児, 儘田 晃
    1985 年 47 巻 5 号 p. 858-863
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    われわれは, 昭和34年より昭和58年までの25年間に当教室で経験した基底細胞腫65例67個の臨床的, 組織学的観察を試みるとともに, Luna’s techniqueを用い, 間質の弾力線維について観察した。臨床的には, 男子がやや多く, 年令では50才以上が80%を占めた。発生部位は顔面が76%ともつとも多く, とくに鼻背·鼻翼に多かつた。臨床病型では, 結節潰瘍型61.2%, 多発表在型14.9%の順で, 他は少数であつた。組織病理は, solid type 35.7%, superficial type 17.9%, adenoid type 13.4%の順であつた。臨床病理と組織病型の間に, 特別な関係はみられなかつた。また, Luna’s techniqueによつて間質の弾力線維を検討した結果, その23%に間質に弾力線維の新生がみられた。これは, 本症の間質依存性を支持するものと考えたい。
  • ラノリンパッチテスト研究班
    1985 年 47 巻 5 号 p. 864-873
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    化粧品皮膚炎, 女子顔面黒皮症, 化粧品皮膚炎既往歴所有者, その他の湿疹·皮膚炎ならびに対照患者, 計430例に, ラノリンおよびその誘導体の計24試料をパッチテストし, 次の成績を得た。
    1) 精製ラノリン脂肪酸(30%)の陽性率が諸試料中最も高かつたが, これは低級脂肪酸による皮膚刺激に起因するものと考えられた。
    2) 接触アレルギー反応の陽性率はラノリンアルコール(30%)が最も高く, (+)以上6.8%, (++)以上2.3%であつた。
    3) なお1週後も何らかの陽性反応を認めた例が6例あり, うちラノリンアルコールが3例で最も多く, 以下, 還元ラノリン2例, ラノステロール1例, 精製ラノリン脂肪酸1例, 部分吸着精製ラノリン1例であつた。
    4) ラノステロール(10%), 還元ラノリン(30%), ポリオキシエチレンラノリンアルコール(30%)の腸性率は(+)以上がそれぞれ3.5%, 2.3%, 4.5%, (++)以上がそれぞれ1.3%, 1.3%, 0.9%であつた。
    5) 酢酸ラノリンの陽性率は0%であり, また, 酢酸ラノリンアルコールの陽性率はラノリンアルコールよりも低率であつた。
    6) 吸着精製ラノリンas isおよび30%の場合, 72時間後(++)以上の明らかなアレルギー反応は430例中皆無で, 精製ラノリンに比しより安全であることを確認した。
講座
治療
  • 広根 孝衞, 安井 裕子, 谷口 滋, 諸橋 正昭, 池田 和夫, 宮入 宏之, 田辺 俊英
    1985 年 47 巻 5 号 p. 884-887
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    アトピー皮膚炎患者20例にtranilast(リザベン)を4週間投与し, その臨床効果を検討した。その結果, 本剤による全般症状改善率ならびに有用率はいずれも80%であり, また本剤は各種症状のうちそう痒に対してもつとも効果的であつた。なお, 有用率は10才未満の患者群, 軽症患者群, 季節的変動を示す患者群, および患者とその家族に気管支喘息やアレルギー性鼻炎の罹患歴がある群においてより高い傾向が認められた。本剤に起因すると思われる副作用は認められなかつた。得られた結果よりtranilastはアトピー皮膚炎に有用な薬剤と考えられた。
  • —尋常ざ瘡に対する作用の評価として—
    谷口 恭章, 斉田 勝, 古田 研一, 中冨 一郎, 矢野 忠則, 荒木 栄喜, 中尾 輝人, 橋口 照司, 辻 正義, 山川 洋志, 高井 ...
    1985 年 47 巻 5 号 p. 888-898
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    Ibuprofen piconol(IPPN)は非ステロイド外用抗炎症薬であり, 皮膚科領域を対象とするベシカム製剤(久光製薬), スタデルム製剤(鳥居薬品)として臨床的に使用されている。この5% IPPN製剤が, 尋常ざ瘡に対して有効性を示す可能性があることがわかつたので, 実験的に尋常ざ瘡に対する作用およびその機序を検討した。5% IPPN軟膏は5% IPPNクリームと同様に強い外用抗炎症作用を示し, IPPNはEscherichiacoli由来の化学遊走因子と同様に, Propionibacterium acnes由来の化学遊走因子における白血球遊走を10-6M以上の濃度で, 濃度依存性に強く抑制した。このことはIPPNの外用抗炎症作用を支持するものであると考えられる。また5% IPPNクリームはtetradecaneによる実験的面皰に明らかに強い作用を示した。すなわち, 面皰毛孔径の増大を抑制し, 皮膚の総脂質, トリグリセライド, 遊離脂肪酸の増加を抑制した。さらにIPPNは皮膚リパーゼ活性およびP. acnes由来のリパーゼ活性を強く抑制した。一方, IPPNは角質に対して影響を示さず, in vitroで各種の細菌, 真菌に対して一部に弱い作用は認められたものの, ほとんど抗細菌, 抗真菌作用を示さなかつた。経皮適用したIPPNは経表皮性に吸収されるのみならず, 経毛包性にも吸収され, 毛包などに高濃度に分布していた。以上のようにIPPNあるいは5% IPPN製剤は実験的面皰の毛孔径の増大に対して強い抑制作用を示し, 白血球遊走阻止作用を含めて, 外用抗炎症作用を示し, また毛包などにも高濃度に分布していることから尋常ざ瘡に対する作用が期待され, その作用は主にIPPNの抗炎症作用に由来するものと思われた。実験的面皰において皮膚の脂質に対する作用も認められたが, 脂質と尋常ざ瘡の関連におけるIPPNの効果は臨床的に確認できなかつた。
  • 早川 律子, 松永 佳世子, 蜷川 よしみ, 伊藤 直子
    1985 年 47 巻 5 号 p. 899-908
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    イブプロフェンピコノール(IPPN)はイブプロフェンの2-, pyridinemethanol esterであり, イブプロフェンより優れた抗炎症作用を有し, 経皮投与されると皮内で約半量がイブプロフェンに分解されるが, 残りの半量はイブプロフェンピコノールのまま存在する。またIPPNはP. acnesよつて引き起された白血球遊走を阻止し, P. acnesのリパーゼ活性を阻害する。IPPNを5%配合したイブプロフェンピコノールクリームのざ瘡に対する効果と安全性を評価するためにopen trialによる予備試験を施行した後, 基剤との二重盲検左右比較試験を施行した。対象としたざ瘡は中等症ないし軽症で抗生物質, ホルモン剤などの投与を必要としない症例に限つた。また症候性ざ瘡も対象から除外した。結果: (1)予備試験では12例の尋常ざ瘡を対象とし朝夕2回外用させた。臨床経過の判定できた10例の4週後の判定は有用3例, やや有用4例であつた。(2)二重盲検左右比較試験は20例の尋常ざ瘡を対象とし朝夕2回, 右側には右用クリームを左側には左用クリームを外用させた。試験は, 8週間を目標に最低4週間観察した。試験終了後にkey openし集計した。IPPNはざ瘡の皮疹を有意に減少させ, とくに丘疹に対して有用であつた。しかし顔面皮表脂質量および皮表脂質中の遊離脂肪酸量の減少は認められなかつた。副作用は予備試験で1例, 二重盲検左右比較試験で1例みとめられたが, いずれも軽度であつた。
  • 武石 正昭
    1985 年 47 巻 5 号 p. 909-911
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    肥満細胞からの脱顆粒抑制作用, 抗ヒスタミン作用, 抗SRS-A作用を持つoxatomide(KW-4354)のアトピー皮膚炎にたいする臨床効果を検討し, 以下の結果を得た。
    1) 18∼33才の男子8名, 女子10名, 計18名が対象となつた。
    2) 総合判定(有用性)において, 18例中きわめて有用5例, 有用10例, やや有用3例であり, 有用以上83.3%, やや有用以上100%であつた。
    3) 前治療薬と効果比較のできた6例においては, oxatomideの方が優れる2例, 同等4例で, oxatomideの方が劣る症例はなかつた。
    4) 副作用は全例において認められなかつた。
    以上の成績から, アトピー皮膚炎に対してoxatomideが従来の抗ヒスタミン剤と比較し, 優るとも劣らない有用な薬剤であることが示唆された。
  • 深松 建史, 今山 修平
    1985 年 47 巻 5 号 p. 912-914
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    Aciclovir〔9-(2-hydroxy-ethoxy methyl) guanine〕(以下ACVと略記)はグアノシン類似体で抗ウイルス作用を示す薬剤である。今回カポシ水痘様発疹症の2例にACV 750mg/日を4日間点滴静注して翌日には皮疹の乾燥をみた。また帯状疱疹の1例に250mg/日(1日1回点滴)を5日間点滴静注し, 5日目には皮疹の乾燥をみた。ヘルペスウイルス感染症のうち, カポシ水痘様発疹症に対してはACVはきわめて有効, また帯状疱疹に対しても1日1回の点滴という外来にて治療可能な方法によつて経過短縮効果があつた。
  • 井上 俊一郎, 平本 力, 瀬野 寿理, 北島 康雄, 矢尾板 英夫
    1985 年 47 巻 5 号 p. 915-919
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    創傷, 熱傷および潰瘍の治療に保存療法として種々の外用剤が用いられているが効果的な外用剤はないと言つてもよいほどである。1981年Knutsonらはsugarとpovidone-iodineとを混合した製剤を難治性潰瘍に対して用い, 優れた治療効果が得られたと報告している。われわれはこの報告にしたがつてsugar/PI compound (白糖300g+イソジンゲル100g+イソジン液30ml)を用い, 1年半の間に(1982年7月∼1983年12月)褥瘡15例, 熱傷9例, 潰瘍9例, 挫滅創3例の治療を行つた。その結果, この方法は創部を乾燥させ, 感染を抑制し, 浮腫を軽減し, 肉芽形成を促進し, 表皮化をはやめるなどの効果を示した。また, この方法は(1)抗生物質の併用や植皮を節約できる, (2)治療期間が短縮される, (3)交換が容易であるなどの特徴を有する。本剤は創傷, 熱傷, 潰瘍などの治療において第一次選択薬となり得るほか, 従来の外用治療に抵抗し, 難治性となつた症例にも適用できると考える。
  • 山本 泉, 加藤 卓朗, 角田 克博, 御藤 良裕, 比留間 政太郎
    1985 年 47 巻 5 号 p. 920-926
    発行日: 1985/10/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    皮膚そう痒症の14例に, ツムラ漢方製剤のうち当帰飲子, 真武湯, 黄連解毒湯の3処方を投与した。処方の選択は診察と問診カードのデータを参考とし, 患者の体力と簡単な主要目標より定めた。患者の年令は25∼68才, 平均59.1才, 薬剤投与日数は14∼113日, 平均58.4日であつた。処方別効果では, 当帰飲子は5例中著効1例, 有効3例(有効率80%), やや有効1例, 真武湯は3例中著効2例(有効率66%), やや有効1例, 黄連解毒湯は6例中著効3例(有効率50%), やや有効2例, 無効1例であつた。この無効の1例も桃核承気湯に変方してやや有効, 大柴胡湯に変方して著効をおさめた。最終的な有効率は71.4%となつた。副作用は, 薬が飲みにくく, 内服時に嘔気が生じるという1例のみであつた。大柴胡湯内服時, 一過性の下痢を生じた1例は瞑眩と考えられた。
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