西日本皮膚科
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症例
Trichoblastic Fibroma
 
寺尾 祐一浅井 芳江濱田 稔夫
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1987 年 49 巻 5 号 p. 841-846

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抄録
69才男子の右大腿部後面に発生したtrichoblastic fibromaを報告した。組織学的には真皮に存在する楕円形の結節で, 表皮との連続性は認められず, fibrousな間質の中にbasaloid cellの胞巣が埋まつている。胞巣の一部からprimary epithelial germ様の突起が出ているものや, basaloid cellの索状構造が観察された。本腫瘍では, keratotic basal cell epitheliomaやsolitary trichoepitheliomaとの鑑別が問題となる。前者では増殖がより速く, しかも潰瘍形成を示し, basaloid cellは表皮と一部連続しており, 炎症性細胞浸潤を伴う間質との間に裂隙を形成する。全体として組織破壊的な増殖を示す。後者では, 表皮との一部連続性があり, よく発達した多数の角質嚢腫が存在し, basaloid cellの索状構造の末端はinvaginationを示し未熟な毛乳頭が存在する。以上の点で鑑別されうるが, 毛包への分化の程度からすればkeratotic basal cell epitheliomaとsolitary trichoepitheliomaの中間に位置する独立した腫瘍と考えられる。
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© 1987 日本皮膚科学会西部支部
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