西日本皮膚科
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症例
Proliferating Trichilemmal Cyst
—症例報告および本邦報告86例の概括—
安達 洋祐今村 治郎
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1988 年 50 巻 1 号 p. 30-34

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抄録
16才女子の項部に生じたproliferating trichilemmal cyst(PTC)の1例を組織学的に検査する機会を得た。外傷の既往はなく, 腫瘤は発生して2年間に徐々に増大したが, 疼痛はなかつた。腫瘤は薄い被膜を有し, 周囲組織との境界は明瞭, 摘出腫瘤の大きさは5×4×4cm, 重さは30gであつた。組織学的には, 辺縁部が不規則に湾入する扁平上皮で囲まれた大小の嚢腫様構造からなり, 好酸性無構造の角質をいれ, ところどころで硝子化·石灰化を示すとともに, 巨細胞を混じた異物反応がみられる。悪性所見は認められない。PTCの本邦報告86例に自験1例を加え, これを良性例(65例)と悪性例(22例)に分けて比較検討したところ, 臨床的には良性例の多くが高令女子の頭部に好発するのに対し, 悪性例は男子で頭部以外に生じることが多く, また病理学的には良性例が普通境界明瞭で被膜を有するのに対し, 悪性例は浸潤性増殖を示すことが多く, 組織学的にしばしば細胞異型や核分裂像を示し, ときにリンパ節転移を伴う。すなわち, 高令女子の頭部に生じたPTCはほとんどが良性と考えられるが, 男子の頭部以外に生じたものは悪性の可能性が高く, 注意する必要がある。
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© 1988 日本皮膚科学会西部支部
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