西日本皮膚科
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50 巻, 1 号
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図説
綜説
症例
  • 桧垣 美奈子, 柴田 明彦, 兼松 憲子, 花輪 滋, 森嶋 隆文
    1988 年 50 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    乾癬の汎発性膿疱化の誘因のひとつとしてコルチコステロイドの全身投与がもつとも重視されているが, 最近われわれは, 低Ca血症によつて誘発された汎発性膿疱性乾癬のまれな24才女子例を経験した。自験例で特記すべきことは, 低Ca血症が副甲状腺機能低下症に基づくこと, 低Ca血症が活性型ビタミンDやCa製剤の内服によつて正常値に復するとともに汎発性膿疱性乾癬の諸症状が速やかに消失したこと, その後に出現した尋常乾癬に活性型ビタミンDはほとんど効果がなかつたことである。このような症例の記載はわが国ではなく, 副甲状腺機能低下症のデルマドロームとしての乾癬について文献的考察をおこなつた。
  • 神崎 寛子, 小原 淳伸, 福代 新治
    1988 年 50 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    われわれは69才男子に認められたピロキシカムによる光線過敏症の1例を経験したので報告する。ピロキシカム内服後3日目, 項部·側頸部·左手背∼前腕(腕時計の部を除く)·パップ剤貼付部を除く背部に浮腫性紅斑が出現し徐々に拡大, 小水疱も伴うようになつた。内服中止後18日目のMEDはUVA, UVBともに短縮は認められなかつた。Patch testではピロキシカムは陰性であつたが, パップ剤, その成分のl-メントールで陽性であつた。Photopatch test(UVA照射)はピロキシカムで陽性, 内服誘発テストではピロキシカム20mg/day, 3日間投与で3日目より初発時の皮疹範囲にほぼ一致して浮腫性紅斑が認められ, このときのピロキシカムによるリンパ球幼若化試験でSI 252%と陽性であつた。また無疹部へのUVA照射も陽性所見を示した。以上の誘発テストの結果は光アレルギー機序を示唆するものと考えた。
  • 富田 敏夫, 江角 浩安, 池田 重雄
    1988 年 50 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    きわめて広汎なリンパ管侵襲を伴つた足底悪性黒色腫の2例を報告する。1例は, 足底に生じたacral lentiginous melanoma(ALM)で, 臨床的にはstage IIと考えられたが, 広汎なリンパ管侵襲と, intransit metastasisを認めたのでstage IIIとした。鼠径リンパ節廓清の術中所見で, 大腿部の皮下脂肪組織中の多数の集合リンパ管を黒色線条として認めた。大腿三角下端には, 黒色線条として認められるリンパ管に, 大豆大の結節を認めた。組織的検索によれば, 黒色線条のリンパ管は, メラノーマ細胞と, メラノファージにより充満され, 腫瘍細胞は一部ではリンパ管壁内に浸潤し, リンパ管周囲まで浸潤が認められる部分もあつた。小結節状の部分では, すでにリンパ管の構造はほとんど消失し, 腫瘍細胞は周囲脂肪織まで明らかな浸潤を示し, intransit metastasisの像を示していた。原発巣周囲でも, 毛細リンパ管と考えられる脈管への浸潤が散見された。第2例は, 足底に生じた結節型悪性黒色腫でstage IVの症例である。本例でも, 右大腿部皮下には多数の黒色線条が認められ, 組織学的には, 集合リンパ管内での腫瘍の多数の転移巣の形成, 増殖を認めた。また足底悪性黒色腫におけるintransit metastasisの予防策として, リンパ液の流れに沿つた連続的皮膚切除術の有用性について検討し, あわせて各stage別の手術療法について述べた。
  • —症例報告および本邦報告86例の概括—
    安達 洋祐, 今村 治郎
    1988 年 50 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    16才女子の項部に生じたproliferating trichilemmal cyst(PTC)の1例を組織学的に検査する機会を得た。外傷の既往はなく, 腫瘤は発生して2年間に徐々に増大したが, 疼痛はなかつた。腫瘤は薄い被膜を有し, 周囲組織との境界は明瞭, 摘出腫瘤の大きさは5×4×4cm, 重さは30gであつた。組織学的には, 辺縁部が不規則に湾入する扁平上皮で囲まれた大小の嚢腫様構造からなり, 好酸性無構造の角質をいれ, ところどころで硝子化·石灰化を示すとともに, 巨細胞を混じた異物反応がみられる。悪性所見は認められない。PTCの本邦報告86例に自験1例を加え, これを良性例(65例)と悪性例(22例)に分けて比較検討したところ, 臨床的には良性例の多くが高令女子の頭部に好発するのに対し, 悪性例は男子で頭部以外に生じることが多く, また病理学的には良性例が普通境界明瞭で被膜を有するのに対し, 悪性例は浸潤性増殖を示すことが多く, 組織学的にしばしば細胞異型や核分裂像を示し, ときにリンパ節転移を伴う。すなわち, 高令女子の頭部に生じたPTCはほとんどが良性と考えられるが, 男子の頭部以外に生じたものは悪性の可能性が高く, 注意する必要がある。
  • —剖検例の報告とアミロイド沈着に関する考按—
    林 庸一郎, 石井 正光, 濱田 稔夫, 根来 伸夫, 三橋 武弘
    1988 年 50 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    65才男子に生じたIgGλ型骨髄腫に合併した全身性アミロイドーシスの1例を報告した。手指の感覚異常にひき続き, 口囲, 鼻前庭部などに無症候性丘疹が出現した。光顕的にはダイロン染色で真皮にアミロイドの沈着を認め, 血管周囲にもアミロイドの沈着が認められた。また, 真皮下層にアミロイド中を弾性線維が縦走する像が認められた。電顕的には表皮直下から塊状にアミロイドの沈着を認め, それを取り囲むように線維芽細胞が突起を伸ばす像が観察された。一部のアミロイド塊中には, 膠原線維や弾性線維がみられた。また, 一部の血管周囲では, アミロイド非沈着部が認められ, 必ずしも血管周囲からアミロイドが形成されていくのではないと考えられた。剖検では, 全身諸臓器にアミロイドの沈着が認められた。とくに, 心内膜下ではアミロイド中に弾性線維を認めたが, 心外膜下では認められず, アミロイド沈着に弾性線維は必ずしも必要ないと考えられた。
  • 土井 尚, 水野 正晴
    1988 年 50 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    最近われわれはpseudocyst of the auricleの54才男子および49才男子の2例を経験したので報告する。2例ともに耳介前面上半分の嚢腫様腫瘤を主訴としており, 臨床像, 組織像よりpseudocyst of the auricleと診断した。1例目は内容液吸引後ロールガーゼによる圧迫固定を行つたが, 術後再発はみられない。2例目は同様に内容液吸引後にステロイド液注入を4回施行したが, その後再発は認められない。原因としてはライソゾームの関与が考えられた。治療法として手術的方法の報告が多いが, 手技も簡単で苦痛も少ないステロイド剤注入法は第一選択として手術治療前に試みられるべき方法の一つと考えられた。
  • —その免疫組織化学と統計的観察—
    鈴木 裕介, 塚本 宏太郎, 岩崎 雅, 宇田川 晃, 衛藤 光
    1988 年 50 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    脂腺母斑の経過中に基底細胞上皮腫(basal cell epithelioma), 乳頭状汗管嚢胞腺腫(syringocystadenoma papilliferum), 汗器官系良性腫瘍の3種類の2次性腫瘍の併発をみた症例を経験した。これら3種類のうち, 診断の困難であつた汗器官系良性腫瘍について免疫組織化学および電顕的に検討を加えた。その結果, 無数の開大する管腔様構造は抗CEA抗体によつてすべて陽性となり, 汗腺分泌部を認識する単クローン性抗体SKH1によつて内外2層の細胞のうち内側の円柱状細胞のみが陽性となつた。また汗腺において筋上皮細胞のみを認識する単クローン性抗体EKH4によつて外側の扁平な細胞のみが陽性となつた。また断頭分泌はみられず無構造な物質が内腔に充満し, 電顕的にはintercellular canaliculiの存在とこれに向かつて排泄されようとする分泌顆粒が多数みられた。以上よりこれらの無数の管腔様構造をエクリン汗腺由来の良性腫瘍と同定した。さらに内腔に向かつて内側の細胞が突出増生する像を重視してeccrine papillary adenomaと診断した。本邦において1965年から1987年までに脂腺母斑に2個以上の2次性腫瘍が併発した報告例は28例, 3個以上の併発例は7例であつた。個々の腫瘍別では28例中basal cell epithelioma 24例, sebaceous epithelioma 12例, syringocystoadenoma papilliferum 10例, sebaceous adenoma 6例, trichilemmoma 5例の順となり, エクリン汗器官系腫瘍の併発はまれであり, さらにeccrine papillary adenomaの併発報告例は皆無であつた。
  • —原因として砒素が疑われた1例—
    赤木 理, 藤原 愉高, 金本 昭紀子
    1988 年 50 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    右手掌にエクリン汗管癌, 躯幹·大腿に多彩な臨床像を示し組織学的にはBowen病様の病変が多発した60才女子の1例を報告した。掌蹠に角化をともなうこと, Bowen病の組織像を示す皮疹が躯幹に多発することから, 原因として砒素が強く疑われた。砒素による皮膚悪性腫瘍としては, エクリン汗器官系の悪性腫瘍はまれである。そのほか, ベンチジンも原因としての可能性を残した。
  • 岡田 孝一, 池内 伸一郎, 福島 佐代子, 坂本 兼一郎, 山崎 雙次, 古谷 達孝
    1988 年 50 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    Pseudoxanthoma elasticumの典型的な皮疹および眼所見を有し, しかも右側間歇性跛行を伴つた61才女子例を報告した。間歇性跛行は周囲に石灰沈着を伴つた右大腿動脈中央部の狭窄により生じたと思われた。なお右足背動脈の拍動不触および右肢端脈波平担化も認められた。本症に併発する心血管病変の発現率ならびに罹患部位などにつき文献的考察を行つたところ, 本邦症例と外国症例間に著しい差を認めた。すなわち心血管病変は外国症例に多く本邦症例はきわめて少なく, これらの原因につき若干の考察を加えた。
  • —組織化学的·電顕的観察—
    茶之木 美也子, 石井 正光, 濱田 稔夫
    1988 年 50 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    全身に多発性の紅斑性浸潤局面からなる皮疹がみられた特発性の毛包性ムチン沈着症を報告した。光顕では, 毛包·脂腺は浮腫状, 嚢腫状を呈し, 上皮細胞は星芒状になり互いに離開していた。毛包および脂腺部と真皮上層の離開したコラーゲン束間に, コロイド鉄染色, アルシャンブルー染色, ムチカルミン染色で陽性, トルイジンブルー染色で異染性を示す物質の沈着を認めた。毛包とその周囲には, 炎症性細胞の浸潤があり, PAP法でS100蛋白陽性細胞を数多く認めた。電顕では, 同部にrERの発達した毛包性上皮細胞と蛋白物質をいれた小胞体をもつランゲルハンス細胞が観察され, 毛包性上皮細胞によるムチン分泌と免疫学的異常がこの疾患の成因にかかわりがあると考えられた。
研究
  • —プラークアッセイ法による検討—
    花田 雄介
    1988 年 50 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    プラークアッセイ法により, 各種免疫修飾剤のADCCに与える効果について検討した。ヒツジ赤血球(SRBC)を標的細胞とし, その溶血斑の大きさ(HP)と数(%PFC)の変化によりADCC活性を算定した。rIFN-αA添加群では, HP(n=69)において薬剤未添加群に比べ各種濃度域で有意の増大がみられ(p<0.001), %PFC(n=5)では有意の差は認められなかつた。SPL添加群ではHP(n=151), %PFC(n=3)ともに有意の増大, 上昇がみられた(p<0.001)。NSP添加群においてもHP(n=87), %PFC(n=5)ともに有意の増大, 上昇がみられた(p<0.001)。PS添加群では逆にHP(n=48)の有意の縮少がみられ(p<0.001), %PFC(n=5)においても有意の低下を認めた(p<0.001)。Methyl B12添加群ではHP(n=62), %PFC(n=4)ともに有意な差は認められなかつた。また抗体を含まない系においてはいずれの薬剤もSRBCに対する溶血作用は認められなかつた。これらのことより, ある一定の条件下では各種免疫修飾剤のもつADCC活性の検定がプラークアッセイ法により可能であることが示唆された。
  •  
    豊島 弘行, 田中 洋一, 山城 一純, 藤田 和夫, 堀 真
    1988 年 50 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    脂腺母斑上に発生した基底細胞上皮腫の1例を経験した。その生検標本では, 好酸性の数個の細胞からなる胞巣が多数散見された。胞巣部の細胞はkeratohyalin顆粒を有し, 電顕的にtonofilament, desmosomeなどが証明された。また, その細胞質は抗ケラチン抗体に強く反応した。これらの所見から各胞巣ではその中心部へむかう“角化”が営まれていることが示唆され, 角化型のBCEと考えられた。
  • 武藤 正彦, 伊与田 修, 木村 秀人, 中溝 慶生, 笹月 健彦
    1988 年 50 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    尋常乾癬の発症に関与する宿主側の遺伝要因を解明するため, 本症多発家系9家系を含む93家系563名を用いて分離比解析による家系分析を行つた。単独確認法により, 正常者×病者の結婚型が7家系, 正常者×正常者である結婚型が83家系収集され, さらに, 完全確認法により正常者×病者である結婚型が3家系捕捉された。単因子遺伝仮説と多因子遺伝仮説の両モデルへの適合度を比較検討した結果, 本症の遺伝様式は多因子遺伝仮説に従うことが示唆された。さらに, 2個の劣性遺伝子が本症の発現に主遺伝子効果を担つている可能性を示唆した。
  •  
    勝俣 道夫, 佐藤 貴浩, 野崎 清恵
    1988 年 50 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    皮膚線維腫には線維芽細胞様細胞と幼若な膠原線維が束状に配列する病変の中央部に泡沫細胞塊や紡錘形空隙がしばしば存在するが, その点について詳細な検討を行つた報告は認められない。著者らは皮膚線維腫190検体より病変中央部に泡沫細胞塊や紡錘形空隙を有する10検体を選び出し, それらの病理組織学的検討とPAP法によるlysozymeの検索を施行し, 1例についてはJEM-1200EX-AMS自動連続撮影電子顕微鏡による観察を行い, 以下の結果をえた。1)これら10例の病変中央部は泡沫細胞塊のみよりなるもの, 泡沫細胞塊と紡錘形空隙が混在するもの, 紡錘形空隙が成熟した膠原線維束の中に存在するものの3型に大別された。2)Lysozymeの検索では全症例とも陽性所見はえられず, lysozyme陽性を示すほかの線維組織球性病変の泡沫細胞様細胞とは何らかの機能的差異のあることが推測された。3)電顕的に泡沫細胞は細胞質内が比較的低電子密度の脂肪滴様顆粒で満たされた細胞で, これらの顆粒の融合や細胞内構造の変性も認められた。紡錘形空隙は通常の固定下では巨大な無構造物質として認められ, この空隙は細胞内構造の変性により生じるものと推定された。4)以上よりこの病変中央部はまず泡沫細胞塊が生じ, 以後経時的に泡沫細胞塊と紡錘形空隙が混在する病変, 紡錘形空隙が成熟した膠原線維束の中に存在する病変となると考えられた。
  • 向山 徳子
    1988 年 50 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    小児の重症アトピー皮膚炎につき, IgE抗体ならびに細胞性免疫能に関して検討するため, 各種抗体の特異IgE抗体, 抗IgE抗体, リンパ球のサブセットとしてOKT4陽性細胞, OKT8陽性細胞, OKT4/OKT8比, concanavalin A(Con A)刺激によるリンパ球幼若化率を測定した。アトピー皮膚炎では血清IgE値は高値を示し, 各種食物抗原のRAST陽性を示していた。Con A刺激によるリンパ球幼若化率の減少がみられた。アトピー皮膚炎においては高IgE血症ならびにT細胞系を含めた一連の免疫反応が存在するものと推察された。
  • —手術摘出頭皮より採取した毛包の培養法—
    桑名 隆一郎, 荒瀬 誠治, 定本 靖司, 中西 秀樹, 榊 哲彦, 武田 克之
    1988 年 50 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    手術時に摘出した頭皮より採取した毛包を材料として, 外毛根鞘由来の上皮系細胞であるhair follicle cells(HFC)の培養を試みた。通常Ca++培地では皮膚表皮細胞と同様に重層化·角化などの分化過程がみられた。次に通常Ca++培地にて培養を開始し, 7日目からHFCの分化を抑制する目的で低Ca++培地を使用したところ, 基底細胞と思われる細胞の単層のコロニーを約20日間にわたり維持観察できた。また, 培養経過中に優位となり, HFCを駆逐する線維芽細胞の抑制にはrubber policemanによる物理的削除を行い, 一定の効果をおさめた。
  • 山田 義貴, 出来尾 哲, 地土井 襄璽, 片岡 真吾
    1988 年 50 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    慢性扁桃炎がみられた掌蹠膿疱症の患者に口蓋扁桃摘出術(扁摘)を行い, その有効性を検討した結果, 次のような成績をえた。
    1) 扁摘の有効率は100%であつた。
    2) 膿栓を有した埋没型扁桃と前口蓋弓の発赤がみられた症例の予後は良好であつた。
    3) 術前における予後判定は, 扁桃誘発試験とインプレトール打ち消し試験の総合判定によるのがよく, ASOを初めとする一般血液検査は指標になりにくいと思われた。
    4) 発症から扁摘までの期間が短いものほど治癒までの期間が短い傾向がみられた。
講座
統計
  • 麻生 和雄, 近藤 慈夫, 佐藤 紀嗣, 安斉 眞一, 小幡 仁子, 青木 武彦, 橋本 秀樹, 山科 潮, 穂積 豊
    1988 年 50 巻 1 号 p. 112-118
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    山形大学医学部皮膚科の昭和51年10月25日から昭和61年末までの10年2ヵ月の外来新患統計を報告した。疾患別統計に加え, 1)教室でのアトピー皮膚炎のアンケート調査, 2)東北地方のスポロトリコーシス, クロモミコーシス, 3)教室での苺状血管腫の経過調査, 4)乾癬症例追跡調査, 5)円形脱毛症例, 6)尋常白斑症例の病型, 発症年令調査, 7)基底細胞癌55例の病理型分類, 8)有棘細胞癌44例の組織分類, 予後, 9)Bowen病30例の発症部位, 悪性腫瘍合併率, 10)天疱瘡, 類天疱瘡の小統計, 10)教室でのレクリングハウゼン病についての調査結果を加えた。
治療
  • 溝口 昌子, 竹島 真徳
    1988 年 50 巻 1 号 p. 119-125
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    アトピー皮膚炎, 皮脂欠乏性湿疹などの湿疹·皮膚炎群のうち比較的軽症の患者26名を対象に, 精製ツバキ油の有効性と安全性を検討した。その結果, 有効率は有効以上65.4%, やや有効以上100%であつた。また副作用はみられなかつた。そう痒, 潮紅, 落屑, 毛孔性角化, 乾燥の5項目につき観察したが, とくに落屑と乾燥に有効であつた。また本剤は無色無臭で, 従来の油にみられるべとつきがなく, 使用感が優れていた。本剤は一切の薬剤を含まない精製した油であるので, 基剤としても利用できるが, 以上のごとく, 本剤単味で湿疹·皮膚炎群に対し有効であるので, 皮膚疾患の治療に有用な製剤と考えられた。
  • 渡辺 亮治, 石橋 康正
    1988 年 50 巻 1 号 p. 126-129
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    1) K-PVA-Lを各種皮膚疾患16例(慢性皮膚炎9例, アトピー皮膚炎3例, 急性皮膚炎2例, 乾燥性皮膚炎1例, 掌蹠膿疱症1例)の主として四肢, 躯幹の羅患部位に使用し, 臨床効果および有用性の検討を行つた。
    2) 全般改善度では, 全症例中かなり軽快以上が15例(93.8%), やや軽快以上は16例(100%)という好成績であつた。
    3) とくにこれという副作用は認められなかつた。
    4) 本剤の外用に際してはべとつき感がなく良好な使用感が得られ, 全症例中有用以上に評価されたものは15例(93.8%), やや有用以上に評価されたものは16例(100%)であつた。
  • 馬野 詠子, 伊藤 祐成, 永島 敬士
    1988 年 50 巻 1 号 p. 130-134
    発行日: 1988/02/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    Dibutyryl cyclic AMP(DBcAMP)はすでに急性循環不全治療薬として一般に使用され, 強い末梢血管拡張作用を有することがしられている。そこで, 難治性皮膚潰瘍の局所血流の改善を期待して, 水溶性軟膏を基剤として3% DBcAMP軟膏を調製し, 褥瘡4例, 熱傷潰瘍, 放射線潰瘍, livedo racemosa, 外傷性潰瘍(原疾患PSS)の各1例, 合計8例に貼布外用した。結果: 皮膚潰瘍は外用数日後から滲出液の著しい減少と鮮紅色を呈する肉芽増生を認め, やがて潰瘍周辺部から急速に上皮化が進み, 2∼12週で上皮形成が完了した。DBcAMPの皮膚潰瘍に対する奏効機序として, 本薬剤の末梢血管拡張作用に基づく局所血流の改善による肉芽形成促進と, さらにアラキドン酸産生抑制作用による消炎効果によるものが推測された。
世界の皮膚科学者
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