西日本皮膚科
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症例
脂腺母斑と3種類の2次性腫瘍
—その免疫組織化学と統計的観察—
鈴木 裕介塚本 宏太郎岩崎 雅宇田川 晃衛藤 光
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1988 年 50 巻 1 号 p. 47-52

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抄録
脂腺母斑の経過中に基底細胞上皮腫(basal cell epithelioma), 乳頭状汗管嚢胞腺腫(syringocystadenoma papilliferum), 汗器官系良性腫瘍の3種類の2次性腫瘍の併発をみた症例を経験した。これら3種類のうち, 診断の困難であつた汗器官系良性腫瘍について免疫組織化学および電顕的に検討を加えた。その結果, 無数の開大する管腔様構造は抗CEA抗体によつてすべて陽性となり, 汗腺分泌部を認識する単クローン性抗体SKH1によつて内外2層の細胞のうち内側の円柱状細胞のみが陽性となつた。また汗腺において筋上皮細胞のみを認識する単クローン性抗体EKH4によつて外側の扁平な細胞のみが陽性となつた。また断頭分泌はみられず無構造な物質が内腔に充満し, 電顕的にはintercellular canaliculiの存在とこれに向かつて排泄されようとする分泌顆粒が多数みられた。以上よりこれらの無数の管腔様構造をエクリン汗腺由来の良性腫瘍と同定した。さらに内腔に向かつて内側の細胞が突出増生する像を重視してeccrine papillary adenomaと診断した。本邦において1965年から1987年までに脂腺母斑に2個以上の2次性腫瘍が併発した報告例は28例, 3個以上の併発例は7例であつた。個々の腫瘍別では28例中basal cell epithelioma 24例, sebaceous epithelioma 12例, syringocystoadenoma papilliferum 10例, sebaceous adenoma 6例, trichilemmoma 5例の順となり, エクリン汗器官系腫瘍の併発はまれであり, さらにeccrine papillary adenomaの併発報告例は皆無であつた。
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© 1988 日本皮膚科学会西部支部
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