西日本皮膚科
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症例
耳下腺癌の皮膚転移
碇 優子徳橋 至橋爪 鈴男柴山 律子鈴木 秀美下田 祥由柴山 英一渡来 潤次
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1988 年 50 巻 2 号 p. 245-252

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抄録

63才男子。約15年前より右耳垂後方に腫瘤があり, 9ヵ月前より急激に増大したため, 当院耳鼻科を受診, 耳下腺癌と診断された。1ヵ月前より頸部から前胸部にかけて皮疹が出現, 次第に増悪し疼痛を伴うようになり, 当科に紹介された。組織像は真皮全層および脂肪織にかけて腫瘍細胞巣が散在し, 一部indian filingの像を呈し, また真皮上層の脈管は増生, 拡張し, 浸潤した腫瘍細胞の塞栓像も認め, 転移性皮膚癌と診断した。当科初診14日後, 死亡した。剖検にて, 耳後部, 頸部リンパ節, 甲状腺, 肺, 副腎, 骨髄の転移巣を確認した。耳下腺悪性腫瘍の皮膚転移は比較的まれであり, 転移性皮膚癌の1%内外と思われる。当科開設以来, 組織学的に転移性皮膚癌と確認された症例は78例あるが, 耳下腺を原発とする症例は初めてであつた。今までに報告された耳下腺悪性腫瘍の皮膚転移のうち, 比較的記載のはつきりした16例を選び, 自験例も含めてそれらの簡単な統計的考察を試みた。17例中16例が男子にみられたことは非常に興味深い。原発は悪性混合腫瘍が多く, 皮膚転移部は頸部, 前胸部など原発巣周囲にみられる傾向にあつた。臨床型では炎症型の症例が多かつた。また, 皮膚に転移するまでの期間は比較的短いようであつた。

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© 1988 日本皮膚科学会西部支部
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