西日本皮膚科
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50 巻, 2 号
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図説
症例
  • —Hypertrophic Cardiomyopathy合併例—
    中川 秀己, 石橋 康正, 小貫 陽子, 芹沢 剛
    1988 年 50 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    臨床的, 組織学的に典型的なblue rubber-bleb nevus syndromeの48才女子例を報告した。血管腫は全身に多発し, 多くは静脈の走行に沿つて存在していた。また肝右葉および左心室壁筋層内にも血管造影にて静脈の拡張蛇行, 腫瘤状の拡張が見出され, 血管腫の存在が確認された。さらに本症例はhypertrophic cardiomyopathyを合併し, 心筋内血管腫が心不全症状の増悪に関与していたと考えられた。家系調査にて, 血管腫の家系内発生が確認され, 姉は同じくhypertrophic cardiomyopathyを伴つていた。本疾患において血管腫は単に皮膚のみでなく, 他臓器にも広汎に生じ内臓病変を伴うことが多いので, 入念な全身的検索が必要であることを強調したい。
  • 小林 泰介, 神崎 保
    1988 年 50 巻 2 号 p. 212-214
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    47才女子。初診3年前から顔貌の変化と著明な倦怠感が出てきた。ほぼ同じ頃から, 全身および頸部が黒つぽくなり, 生まれた時からあつた母斑細胞母斑の周囲が脱色してきた。その後, 成長ホルモン産生下垂体腫瘍と診断され, 下垂体前葉摘出術を受けた。術後, 色素沈着と黒色表皮腫は軽快してきたが, サットン母斑に大きな変化はない。末端肥大症, 色素沈着および黒色表皮腫は成長ホルモンに関係して発症したものと考えられる。しかし, サットン母斑が同時に発症したという報告はいまだなく, その因果関係については不明である。
  • 中村 猛彦, 木村 達, 中村 昭典, 杉若 正樹, 長家 尚
    1988 年 50 巻 2 号 p. 215-217
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    電気工事作業中に6万ボルトの配電線に接触し受傷した28才男子の電撃傷の1例を報告した。患者は受傷直後より激しい下腹部痛が持続し, 精査の結果, 膀胱の損傷が認められた。本症状の発生原因につき理学的に検討を加えたところ, 通電による直接障害が考えられた。電撃傷の治療にあたつては, 潜在する病変のひろがりを確認するとともに, 集学的診療が必要であることを痛感させられた。
  • 平野 哲哉, 末永 義則, 山元 修
    1988 年 50 巻 2 号 p. 218-222
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    Leser-Trélat signを呈したと思われる2例を報告した。症例1では乳癌と診断される1年前より, 症例2では肺癌と診断される8ヵ月前より脂漏性角化症が急速に増加, 増大した。病理組織所見では症例1が腺癌であり, 症例2が小細胞癌であつた。本邦における本徴候の報告は, 自験例を含め36例であり, 胃癌が42%を占め最多で, 病理組織所見では腺癌が47%を占めた。
  • 藤田 優, 白井 みどり
    1988 年 50 巻 2 号 p. 223-226
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    86才女子。両側上眼瞼内側に黄色斑, 黄色丘疹および面皰が集簇して発生した。組織学的に検討したところ右上眼瞼では眼瞼黄色腫と老人性面皰が相接して存在しており, 左上眼瞼では膠原線維の好塩基変性を伴う面皰の像で, 周囲にはリンパ球, 組織球, 巨細胞に混じて泡沫細胞様細胞の浸潤を認めた。両疾患の合併例を文献的に調べ, その因果関係について考察し, さらにdystrophic xanthomaの文献を紹介した。これらのことから自験例の眼瞼黄色腫はdystrophic xanthomaとして生じたのではないかと推測した。
  • 武藤 正彦, 西村 正幸, 木村 秀人
    1988 年 50 巻 2 号 p. 227-229
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    13才女児にみられた溶連菌による顔面丹毒の1例を報告した。病巣部より黄色ブドウ球菌が検出され混合感染と考えられた。丹毒では文献的にも黄色ブドウ球菌の混合感染が少なからず観察されているので治療にはβ-ラクタマーゼ耐性の抗生物質を使用した方がよいと考える。
  • 井料 香代子, 加治 英雅
    1988 年 50 巻 2 号 p. 230-233
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    偽腺性有棘細胞癌と限局性多発性神経線維腫を併発した58才男子例を報告した。左足背部に, 中央に潰瘍を有する小指頭大扁平腫瘤があり, 組織学的には典型的な偽腺性有棘細胞癌であつた。右上腹部から右腰部にかけて, 米粒大から大豆大の半球状の軟らかい腫瘤が列序性に10数個多発していた。組織学的には神経線維腫で, Recklinghausen病の徴候を伴わないことより限局性多発性神経線維腫と診断した。両疾患は偶発合併と思われた。
  • 堀内 長晴, 長谷川 隆哉, 佐瀬 裕, 鈴木 正夫, 長尾 貞紀
    1988 年 50 巻 2 号 p. 234-240
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    左腹部原発の腫瘍で, 同側鼠径リンパ節転移を認めた82才男子例を報告した。扁平隆起性皮疹に気づいてより1年4ヵ月後に, その中央部に半球状腫瘤の出現を認め, 光顕·電顕所見より既存のeccrine poromaより生じたeccrine porocarcinomaと診断した。左鼠径リンパ節にその転移があつた。また本患者において血中CA19-9が高値を示した事実より, 本腫瘍がCA19-9を産生している可能性を検索するために抗CA19-9モノクローナル抗体を用い, Biotin-Strept Avidin法にて組織染色を試み陽性所見を得たのであわせて報告するとともに, 若干の考察を加えた。
  • —症例報告および過去12年間の四肢に生じた基底細胞癌の本邦報告例の統計—
    高野 美香, 西村 正幸, 林 紀孝, 利谷 昭治
    1988 年 50 巻 2 号 p. 241-244
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    54才男子の右大腿に生じた表在型基底細胞癌の1例を報告した。四肢に発生した基底細胞癌の本邦報告例を過去12年間にわたり集計したところ39例(自験例を含む)の報告があり, 四肢発生例の30%前後が表在型であつた。
  • 碇 優子, 徳橋 至, 橋爪 鈴男, 柴山 律子, 鈴木 秀美, 下田 祥由, 柴山 英一, 渡来 潤次
    1988 年 50 巻 2 号 p. 245-252
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    63才男子。約15年前より右耳垂後方に腫瘤があり, 9ヵ月前より急激に増大したため, 当院耳鼻科を受診, 耳下腺癌と診断された。1ヵ月前より頸部から前胸部にかけて皮疹が出現, 次第に増悪し疼痛を伴うようになり, 当科に紹介された。組織像は真皮全層および脂肪織にかけて腫瘍細胞巣が散在し, 一部indian filingの像を呈し, また真皮上層の脈管は増生, 拡張し, 浸潤した腫瘍細胞の塞栓像も認め, 転移性皮膚癌と診断した。当科初診14日後, 死亡した。剖検にて, 耳後部, 頸部リンパ節, 甲状腺, 肺, 副腎, 骨髄の転移巣を確認した。耳下腺悪性腫瘍の皮膚転移は比較的まれであり, 転移性皮膚癌の1%内外と思われる。当科開設以来, 組織学的に転移性皮膚癌と確認された症例は78例あるが, 耳下腺を原発とする症例は初めてであつた。今までに報告された耳下腺悪性腫瘍の皮膚転移のうち, 比較的記載のはつきりした16例を選び, 自験例も含めてそれらの簡単な統計的考察を試みた。17例中16例が男子にみられたことは非常に興味深い。原発は悪性混合腫瘍が多く, 皮膚転移部は頸部, 前胸部など原発巣周囲にみられる傾向にあつた。臨床型では炎症型の症例が多かつた。また, 皮膚に転移するまでの期間は比較的短いようであつた。
  • 水野 正晴, 土井 尚, 加藤 良隆
    1988 年 50 巻 2 号 p. 253-258
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    61才男子の扁平苔癬の定型疹に線状扁平苔癬と環状扁平苔癬を併発した1例を報告した。腹部のほぼ正中線上の手術瘢痕に一致して紅色から褐色の軽度落屑性の皮疹がみられ, 軽度そう痒を伴つていた。その皮疹の辺縁は褐色の色素沈着を示し, 中心部は紅色やや萎縮状, 環状の形態を示した。左鼠径部に沿つて小指頭大から拇指頭大の同様皮疹が数個配列してみられ, 環状の形態がより明らかであり, これらは環状扁平苔癬と考えられた。左腋窩から左上腕内側にかけて粟粒大から小指頭大の同様皮疹がほぼ中心を線状, 列序性に配列して認められ, 線状扁平苔癬と考えられた。両下腿前面には, 米粒大を主とする多角形の褐色扁平丘疹が散在性に認められ, 軽度そう痒, 落屑を伴い, 一部は融合傾向を示し扁平苔癬の定型疹と考えられた。病理組織学的には典型的な扁平苔癬の像を示した。Suttonは環状扁平苔癬を3型に分類しているが, 本症例はこれらの型に合致せず, 丘疹が拡大することなく, はじめから環状斑状を示し, atrophic annular型というのが適当と考えられた。とくに誘因なく扁平苔癬の定型疹および非定型疹が多発性に生じることはまれではないかと思われた。また, なんらかの皮疹発生の素地のある表皮に外力(日光や薬剤性障害, とくに繰り返される摩擦)が加わつて表皮基底層に障害が起り, それが引き金となり皮疹が出現するのではないかと推察された。
  • 藤広 満智子, 前田 学
    1988 年 50 巻 2 号 p. 259-264
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    原発性表在性皮膚ムーコル症の1例を報告した。患者は24才男子, 重度心身障害者である。昭和60年8月5日, 痙攣発作時に転倒し左大腿骨を骨折した。1ヵ月半ギプス固定した後, 大腿全周を被うプラスチック製のファンクショナルブレースで固定を続けた。装着3日目に装具下に汗疹様の紅色小丘疹がみられたため, 0.02%塩化ベンザルコニウム液で清拭したところ, 2日後から左大腿全周にそう痒を伴う発赤, 腫脹, 小水疱が認められた。接触皮膚炎を疑い, 0.12%吉草酸ベタメタゾンを外用し, 装具の装着を続けた。3日後には紅斑, 小水疱は軽快したが, 一部の紅斑は地図状に残存し, その上に毛包一致性の膿疱が生じ, ステロイド外用中に急速に増加した。膿疱膜の直接鏡検にて垂直に分枝した隔壁のない太い菌糸が再三認められ, 培養にてAbsidias corymbiferaが分離された。病変は1%トルシクラートクリーム外用により, 2週間後には軽い色素沈着を残し治癒した。なお経過中, 患者は常に抗生剤を投与されていた。原発性皮膚ムーコル症には, 主として健常人に発生し予後のよいsuperficial typeと, 基礎疾患を有する患者に発生し, 急速に血管侵襲をきたすため予後の悪いgangrenous typeの二つの型があり, 自験例は前者に相当すると考えられた。
  • 溝上 和子, 大橋 勝
    1988 年 50 巻 2 号 p. 265-267
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    73才男子の大型局面状類乾癬に伴う続発性皮膚限局性アミロイドーシスと診断した症例を報告する。
研究
  • 吉田 紀子
    1988 年 50 巻 2 号 p. 268-270
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    細胞電気泳動法により, 乾癬患者におけるPUVA療法前後の末梢血赤血球, 好中球の膜荷電を検索し, その細胞膜におよぼすPUVAの作用を検討した。乾癬患者5例のうち2例は内服PUVA, 2例は外用PUVA, 1例はPUVA-bath療法を施行した。内服PUVAにおいて好中球のみPUVA後の方が膜陰性荷電の増加が認められた。しかしt検定で1例は有意差があり, もう1例は有意差がなかつた。外用PUVAおよびPUVA-bathにおいて赤血球ではPUVA後の方が有意に膜陰性荷電の増加が認められた。好中球では逆に低下が認められ, t検定では外用PUVA2例に有意差があり, PUVA-bathでは有意差がなかつた。この結果から, 1)好中球では内服と外用PUVAの違いにより, 2)外用PUVAおよびPUVA-bathでは赤血球と好中球の違いにより, 膜荷電の変化の仕方が異なることを認めた。
  • —抜去毛より採取した毛包の培養法—
    桑名 隆一郎, 荒瀬 誠治, 定本 靖司, 中西 秀樹, 武田 克之
    1988 年 50 巻 2 号 p. 271-276
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    真皮成分の付着していない抜去毛毛包のexplant cultureおよびdispersed cell cultureを試み, 線維芽細胞の混在しないhair follicle cellのみのコロニーを得ることができた。マイトマイシンC処理した3T3細胞, 裏面に3T3細胞を培養したI型コラーゲン膜をfeeder layerとした場合に比較し, 基底膜の構成成分であるIV型コラーゲンを培養基質としたときに最も有効にhair follicle cellのコロニーが得られた。
  • 中野 純二, 今村 隆志, 浜中 すみ子, 久本 和夫, 麻上 千鳥
    1988 年 50 巻 2 号 p. 277-281
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    エノキサシンが原因と考えられた光線過敏性皮膚炎の3例を報告した。この3例では, 1)エノキサシンを内服していたこと, 2)エノキサシン内服光照射試験でUVAの最小紅斑量の著明な短縮がみられたこと, 3)内服光照射試験後, 遠隔部位に皮疹の再燃をみたこと, 4)初診時ならびに再燃時の皮疹の臨床像, 病理組織像が急性湿疹型の反応所見を示したこと, 5)発症までに約1ヵ月間の感作期間があつたと思われることなどがそれぞれ共通していた。エノキサシンの基本骨格(フッ素結合ナフチリジン環)構造類似体で, フッ素などハロゲンをもたないピペミド酸では内服光照射試験は陰性であつた。このことから, この3例の光感作物質は, ハロゲン化されたナフチリジン環と考えられた。
  • 上田 恵一, 鈴木 裕至, 青山 文代
    1988 年 50 巻 2 号 p. 282-287
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    白色ワセリン1g中に1α,25-dihydroxyvitamin D3 5μgを含有する軟膏をモルモット背部皮膚に外用し, 経時的に光顕, 電顕的に観察した。光顕的には本剤外用2週後では表皮は対照と差異はないが, 4週後では表皮の軽度肥厚, 顆粒層の肥厚が認められた。電顕的には, 2週後では基底層の細胞は縦に細長く, 核も細長いが, 核質は均質であつた。細胞質は浮腫性でトノフィラメントは大小の束を形成, 細胞間は開大していた。有棘層では対照と差異はないが, 有棘層上層の細胞質に小型のケラトヒアリンが形成され, 顆粒層の細胞質には大型で異型なケラトヒアリンが認められた。4週後では基底層の細胞は2週後と同様に縦に細長く, 核も細長く, 核質は均質であり, 細胞質は浮腫性で細胞間は開大していた。有棘層の細胞は対照と差異はないが, 顆粒層では大小のケラトヒアリンが形成され, 互いに融合して大型のものもみられた。角層の細胞は2, 4週後もともにケラチンパターンを示していた。以上から, 本剤を正常モルモット皮膚に外用すると, 表皮は軽度肥厚するが, とくに顆粒層の肥厚がみられ, 大小のケラトヒアリンが多数形成され, 異型または融合した像を示すケラトヒアリンが混在してみられた。したがつて, 本剤は正常表皮の角化過程に影響することが認められた。
  • 車地 祐子, 近藤 靖児, 宮元 千寿, 山口 潤, 入交 敏勝, 佐藤 吉昭
    1988 年 50 巻 2 号 p. 288-295
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    新しく開発されたサンスクリーン剤, エクラン·トタル·オパック 15+ A+Bタンテ(以下15Tと略), 同アンコロレ(以下15Iと略)(RoC S. A., France)の2種類について, 健康人男女23名を対象に室内および屋外実験によつてその紫外線防御効果を検討した。被験試料はすべて塗布量2mg/cm2(厚さ20μ)で実験を行つた。まずsandwich法で波長別透過率を測定し, その実用性を確認した。室内実験では, デルマレイM-DMR-1型のSEランプに対するsun protection factor(SPF)を検討したところ, 15Tでは平均24.7, 15Iでは17.0であつた。次に外用PUVAに対するSPFはそれぞれ14.6と10.1であつた。また真夏の千葉県鴨川の海岸で測定した自然光に対するSPFは, 15Tが13.6以上, 15Iが9.0以上であつた。以上より, 15T, IはUVB域のみならずUVA域にも有効で, 実用性もすぐれていることがわかつた。しかしUVAによると思われるpigmentationの出現を抑制することはできなかつた。また, 同社の前報の製品との比較も行つた。
  • —50%DNA合成抑制濃度比較による外用グルココルチコイド剤の臨床効果判定の可能性—
    永井 隆, 荒瀬 誠治, 武田 克之
    1988 年 50 巻 2 号 p. 296-302
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    8種類の外用グルココルチコイド剤(以下GC剤)の, 培養ヒト皮膚線維芽細胞DNA合成に対する影響を, 0.1, 1, 10μg/mlの濃度で検討した。すべてのGC剤はこの濃度内でヒト皮膚線維芽細胞のDNA合成を濃度依存性に抑制した。GC濃度を対数でとり, コントロールに対する%DNA合成率をグラフにすると, すべてのGC剤で濃度の対数にほぼ反比例する直線となつた。このグラフよりそれぞれのGC剤について50%DNA合成抑制濃度を算出すると, 臨床効果の強い薬剤ほど低い濃度でDNA合成を50%抑制し, ほぼ臨床効果と相関する結果を得た。GC剤には各種の生物活性があり, 現在その効果判定はおもにin vivoの実験で行われ, in vitroでは決め手となる方法がない。それゆえここで得られた値はGC剤の総合評価にあたり, 指標の一つになりうると考えた。また本法を用いて, GC剤の臨床効果をin vitroで推察しうると考えた。
講座
統計
  • 山元 修, 平野 哲哉, 末永 義則
    1988 年 50 巻 2 号 p. 308-312
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    最近7年間に産業医大皮膚科で経験した脂漏性角化症について統計的に観察し, 以下の結果を得た。
    1) 7年間の脂漏性角化症の総例数は365名の患者より得られた404病巣で, 外来総患者数の2%を占めた。
    2) 性差はほとんど認められなかつた。
    3) 年令的に, 50∼70才代に好発していた。
    4) 組織型別頻度では, hyperkeratotic type 196病巣(48.5%), acanthotic type 132病巣(32.7%), irritated type 31病巣(7.7%), reticulated type 7病巣(1.7%), melanoepithelioma (Bloch) 6病巣(1.5%), clonal typeおよびstucco keratosisが各2病巣(0.5%), melanoacanthoma 1病巣(0.2%), combined type 24病巣であつた。
    5) 組織型別発生部位では, 全体的に脂漏部位に好発していたが, hyperkeratotic typeでは四肢にも比較的多くみられた。
    6) 臨床診断と組織診断の比較検討では, 臨床的に脂漏性角化症と診断された例の組織診断不一致例は29病巣で, lentigo senilisとverruca vulgarisが各4病巣, follicular poromaとsenile keratosisが各3病巣などであつた。組織学的に脂漏性角化症と診断された例の臨床診断不一致例は54病巣で, verruca vulgaris 20病巣, nevus pigmentosus 17病巣などであつた。
治療
  • 田中 信, 高槻 覚
    1988 年 50 巻 2 号 p. 313-316
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド外用療法を行つた14例の尋常乾癬について, 1)ステロイド外用量が減量できないか, 2)より弱いステロイド外用剤に変更できないかと考えリザベン内服の併用を試み, 以下の結果が得られた。1)1日外用量が1/3に減量できたものが3例, 1/2に減量できたものが2例であつた。2)外用剤をより弱いものに変更できたものは4例であつた。さらに, 3)併用により皮疹がほとんど消失したものおよび再燃までの期間が延長できたものが1例づつみられた。リザベン併用は有効と考えられるが, 長期の内服が必要であり, 速効性はみられなかつた。しかし, 副作用は1例もみられず, 長期内服が可能である。リザベン内服の併用は尋常乾癬の補助療法として試みるべき治療で, 新しい治療法となる可能性があると考えた。
  • リザベン乾癬研究班
    1988 年 50 巻 2 号 p. 317-325
    発行日: 1988/04/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    経口抗アレルギー剤トラニラスト[N-(3,4-dimethoxy cinnamoyl)anthranilic acid, リザベン]の乾癬に対する臨床効果を12施設によるopen studyで検討した。観察症例数は総計116例, このうち有効性解析対象は74例であつた。そのうち71例は8週間以上の内服を行つた。また, 併用薬はリザベン投与前のステロイド外用剤をそのまま継続使用, あるいは新患の場合は, 0.12%吉草酸ベタメタゾン(または硫酸ゲンタマイシン配合吉草酸ベタメタゾン)軟膏の使用を許可した。その結果, 最終全般改善度は「治癒」2.7%, 「著しく軽快」25.7%, 「軽快」35.1%と軽快以上の累積改善率は63.5%であつた。有用性については「きわめて有用」8.1%, 「有用」45.9%, と有用以上の累積有用率は54.0%であつた。副作用は解析例81例において14例, 16症状が発現し, 副作用発現率は17.3%であつた。症状としては, 胃腸症状, 肝機能異常, 泌尿器系症状, その他であつた。ほかの報告にくらべなぜ今回の治験で副作用が高率にみられたかは不明であつた。症状別改善度の推移では, 潮紅, 鱗屑, 浸潤·肥厚, 皮疹の新生についてリザベン投与2週後から有意に改善され, そう痒については投与4週後から有意な改善が認められた。
世界の皮膚科学者
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