西日本皮膚科
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症例
骨カリエス直上皮膚に生じた類肉腫様結核結節
鈴木 裕介田沼 弘之
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1990 年 52 巻 1 号 p. 31-35

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抄録

3年来左肘頭部の計22個におよぶ大小の赤色結節が無自覚的に集簇し, 初診2週前より同肘関節の病的骨折をきたした71才女子例を報告した。組織学的に同関節尺骨端は完全な骨壊死の状態, 皮膚の結節ではサルコイド反応を示した。骨, 皮膚組織ともチールネルセン染色, グロコット染色陰性, 皮膚組織の偏光顕微鏡にて異物は存在せず, 皮膚の抗酸菌培養も陰性であつた。胸部レ線にて右上肺野に結節状陰影が1個存在したがBHLはなく, PPD10×12mm/20×25mm, 血中ライソゾーム値27.5μg/ml, ACE値19.4IU/L, 喀痰および病巣部関節腔液から抗酸菌が各々6週後, 4週後に培養され, ナイアシンテスト, 硝酸銀還元テストよりヒト型結核菌と同定された。RFP450mg, INAH300mgの内服および病巣部関節掻爬術を施行し, 内服開始1ヵ月後, 掻爬術2週後には皮膚の大小の結節は著しく改善し, 組織学的にも類上皮細胞肉芽腫の著しい退縮と, 巨細胞, リンパ球浸潤の増強が認められた。本症例の病態は, 数年以上前から肺原発の結核病巣が無自覚的に存在し, 何らかの機転でこれが血行性に播種, 左肘関節腔内で増殖したため, 関節腔に接する3本の骨すべての骨端壊死(骨カリエス)をきたし, 恐らく菌体成分の一部がリンパ行性に直上の皮膚に到達し組織学的にサルコイド反応を呈する皮膚結核を形成したものと考えた。

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© 1990 日本皮膚科学会西部支部
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