抄録
第1報では, 長崎原爆被爆者なかでも近距離被爆者においては, 皮膚培養細胞に原爆放射線に起因すると考えられる染色体異常が観察されることを報告した。これらの染色体異常を保有する細胞の中には, 同一の異常核型を保有するクローン形成も認められることから, 被爆者における皮膚癌発生率の疫学的調査が必要であることを示唆した。本報では, 長崎原爆被爆と皮膚癌発生との関連を検討するために, 長崎大学医学部原爆資料センターに収録されている直接被爆者66,276人の資料をもとに検討した。被爆者皮膚癌症例は, 長崎市内の3大主要病院から110症例が収集された。これらの110症例について, 皮膚癌発生頻度と被爆距離との関連を検討し, 以下の結果を得た。すなわち, 皮膚癌発生頻度と被爆距離との間には, 110症例全例で検討した場合, 統計学的に高い相関を示した(p<0.01)。男女別に分けた場合, 男性症例のみにおいて相関が認められた(p<0.01)。