抄録
4歳女児の頭頂部に発症した脂腺母斑を伴ったpigmented cystic pilomatricomaの1例を報告した。脂腺母斑下の真皮深層に嚢腫様構造を認め, 嚢腫壁は3∼10層のbasophilic cellあるいはbasaloid cellから成り, 一部ではbasaloid cellが重積し不規則に内腔に向って突出し, shadow cellに移行していた。Basophilic cellに混在してpigment blockade melanocyteが散在し, basophilic cell内にはメラニン顆粒が認められ, 嚢腫周囲の間質にはmelanophageを認めた。これらのmelanocyteはbasophilic cellと共生状態にあり, pilomatoricomaの発生初期より迷入し, さらに, pilomatricomaが元来melanocyteの豊富な毛母由来であることを示唆する所見の1つであると考えられた。また, 嚢腫様構造は, 嚢腫壁の一部にacantholysisを認めたことから, 二次的な変化であると推察した。